自宅マンション購入の際に収益性はどれくらい考慮するべきか?

自宅マンションの購入に際して、「収益性」を考慮する必要はあるのでしょうか?

住むのは自分や家族という場合、「収益性」はあまり気にする必要がないと思います。収益性というのは、他の人に部屋を貸して、その賃料収入で元が取れるか、という話なので。自分で住むのだから、安全安心は重視して頂きたいですが、それ以外の項目はご自分の好きにしていいと思います。

但し、転勤で一時的に住めなくなったり、実家の跡を急に継がなくてはいけなくなった等の理由により、売却と合わせて「賃貸」という選択肢を考えることもあるかもしれません。そのような将来的なリスクヘッジ的な意味合いと、最近では借り手の付かないような物件は売却も困難なことがあるので、『資産性』を判断するために「収益性」で検証するという位置付けだとお考え下さい。

現時点での想定賃料

「収益性」について、一番の見極めポイントは、相応の賃料を取れる物件か?ということです。

この“相応の賃料”というのは、自宅マンションの場合、ローン+管理費・修繕積立金+固定資産税+保険料等必要経費の合計額を上回る賃料のことです。また、エアコンや給湯器など室内の設備の更新が必要になれば、専有部分の中の設備更新は所有者の責任となるので、その分の余裕もなければいけません。

要は、ランニングコストを上回る収入(賃料)を取ることができるか、です。このシミュレーションをして毎年(毎月)赤字になるというマンションは、価格が高過ぎだと判断できます。

“賃料”の査定方法については、こちらの記事で解説していますので、そちらを参考になさってください。但し、収益不動産について書いた記事なので、「レントロール」や「賃貸履歴」等は無視してください。

管理費の水準及び値上げの可能性

管理費は、築浅のマンションでも築古のマンションでもさほど変わらない場合があります。建物が古くなるに従いメンテナンス個所も増える修繕積立金とは異なり、管理自体にさほど大きな変化はないからです。

築年よりも、建物の形状や管理のしやすさ、共用部分の豪華さ、管理形態等により管理費に違いが出ます。また、管理内容に関心を持たない管理組合だと、管理会社が必要以上の管理費を取っている場合もあります。

ただ、現状(2022年ごろ)、管理会社から各マンションに派遣される管理員不足が深刻化しているため、管理費の値上げを求めてくる管理会社もあるようです。その場合も、管理内容等を精査し、人材確保のための値上げ分ならしょうがない、というような交渉している形跡が議事録等に見られるマンションだと今後も安心です。

修繕積立金の水準及び値上げの可能性

修繕積立金の値上げの可能性については、以前書いた記事で触れましたので、ここでは簡単におさらいします。修繕積立金の積み立て方式には、主に、

段階増額積立方式
均等積立方式
一時金併用方式
の3つがあり、2番目の「均等積立方式」以外は値上げの可能性は否定できません。
※「均等積立方式」も社会経済情勢の変化によって、値上げする可能性は否定できませんが、ここでは可能性が小さいものとして扱います。

投資案件で、「段階増額方式」または「一時金併用方式」の築浅マンションの収益性をシミュレーションする際に、現状の修繕積立金の額をそのまま費用としている業者を見かけますが、修繕積立金については、最低でも相場である200円/m2前後で計算すべきでしょう。

現状、相場である200円/m2以上の修繕積立金を徴収しているマンションであれば、基本的には、現状の金額を採用します。ここでも、費用については、保守的に査定します。
※あまりに相場から離れて高い場合は、その理由も探らないとなりませんが。

修繕積立金については、単純化しますと、相場より安い金額だった場合には値上げの可能性があるので、費用の計上は保守的にしましょう、ということになります。

空室率の査定

ここでお伝えしたいのは、「空室率を考慮しない収益性のシミュレーションはあり得ない」ということです。

「空室率」をどれくらいに見積もるのかを自分で調べる方法については、こちらの記事を参考にしていただきたいのですが、収益性が賃貸を意味する限り、「空室(の期間)」は発生します。

前の入居者が退去して、すぐに新しい入居者が見付かったとしても、部屋の清掃や修繕(クロスの張替え)等で早くても1ヶ月ほどは空室期間が発生します。

購入検討マンションの立地によって、賃貸需要が異なりますので、それに見合った空室率を見積もる必要があります。

還元利回りの査定

還元利回り」も難しい概念ですが、正直、自宅を購入する際には、あまり厳密に考える必要はないのではないかと思っています。この「還元利回り」というのは、収益価格を出す際に決定的な役割を果たすのですが、自宅の場合は重要性が低いです。利回りよりも、上述したように、ランニングコストを上回る賃料を取れるかどうかの方が重要です。

「還元利回り」に興味のある方は、こちらの記事を参考にご自分で調べていただきたいのですが、その物件に見合った利回りを査定するというのは結構ハードルが高いです。
※仲介業者さんで、これを査定できる人がいたら、かなり優秀です。

ただ、現状は不動産マーケットが過熱気味なので、利回りは低くなりがちです。不動産というのは、上述のように空室リスクもありますし、地震などの災害で損壊リスクも負っているので、正直、5%は欲しいところなのですが、都心部ではこれを下回るのが常態となっています。

固定資産税等その他

マンションの物件情報を見ていて不満なのが、「固定資産税及び都市計画税」の記載がないことです。たまに記載されている物件もありますが、非常に稀です。

都心部のファミリーマンションですと、固定資産税等が20万円を超えることもザラなので、修繕積立金より高いマンションもあるくらいです。収益シミュレーションをするためだけでなく、ただ単にランニングコストを計算する場合にも欠かせない項目だと思うのですが、買付証明書を出さないと教えてくれない業者もいます。

また、この固定資産税等は、推測するのが難しい面もあります。ある程度の幅では推測できますが、正確に算出するのは外から見るだけでは困難です。なので、この項目については、基本的には、売主に請求して固定資産税等の実額を教えてもらい、その額をシミュレーションに使います。

売主に実額を貰う前である場合は、推測した額となることをご了承いただくことになります。

結論

自宅を購入するにあたって「収益性」を重視する必要はありません。ただ、「収益性」の観点からも検討しておくと安心です。

特に、転勤の可能性がある会社員等の方の場合は、リロケーション(留守宅を賃貸すること)にした場合に、ランニングコストを上回る賃料を取れるかどうかは非常に重要な視点なのではないでしょうか。

とはいえ、住居を選ぶときは、「家族の命と財産を守ること」を第一義とするべきです。その観点から「良い物件」を選べば、ほとんどの場合、「資産性」や「収益性」も後から付いてきます。

この記事で、「不動産分析サービス」の各項目についての説明は終了です。これらの記事により、自分でも調べようと思えば、ある程度は物件のリスク判定ができるようになるのではないでしょうか。

不動産の購入をお考えなら、まずは不動産について勉強して頂き、業者の言い分が正しいかどうかを見抜くだけの知識と情報を身に着けていただきたいと思います。

それでも、調べた結果手に入れた情報について、良し悪しの判断に迷うことがあると思います。その場合は、どうぞ、専門家を使ってやってください。
※不動産については、業界最難関の資格保有者である不動産鑑定士にご相談ください。(最後は営業となりましたが、よろしくお願いいたします。)