首都直下地震の発生確率は「今後30年以内に70%」とされています。「いつか」は予見できないものの、近い将来に必ず発生します。
そして、地震の揺れは場所によって異なります。
揺れが「大きい」場所と「小さい」場所が300mも離れていないということが、関東大震災でもみられました。
防災の一丁目一番地は、『安全な場所に住むこと』です。
首都直下地震

上図で薄いピンクで表記しているM7クラスの地震が、関東大震災から100年経過しても発生していないため、いつ発生してもおかしくない状態なのではないかと危惧されています。
因みに、阪神淡路大震災のマグニチュードは「7.3」であり、M7クラスでも「直下」で発生すれば、被害は大きくなります。
大地震を生き延びるための防災クイズ(一番の基本編)
いつ起きてもおかしくないといわれる「首都直下地震」を生き延びるために必要な知識をクイズ形式で学びましょう!
大地震への備えとして最も大事なことは何でしょうか?
建物の耐震性? 家具の固定?、、、それも大事ですが、更にもっと大事なことがあります。
一番は『安全な場所に住むこと』です。
「安全な住まいとは何か?」を基本から学ぶことが、家族の命を守るための第一歩です。
当然、資産性も保てます。家が壊れたら、資産性も何もないので。
では、問題にまいりましょう!
※すべての問題で正解を覚えていただきたいと思います。命にかかわることなので。
【第1問】災害に遭う可能性が“低い”地形
次の地形のうち、災害に遭う可能性が最も低いのは?
- 【1】谷地・低地
- 【2】高台(台地)
- 【3】湾岸の埋立地
正解!
不正解...
正解は【2】高台(台地)です。
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【第2問】震度7の揺れが襲うエリア
首都直下地震で揺れが震度7となる可能性が指摘されているのは、主に次のどのエリアか?
- 【1】武蔵野台地
- 【2】東京東部の低地帯
- 【3】皇居
正解!
不正解...
正解は【2】東京東部の低地帯です。
東京東部の「海抜ゼロメートル地帯」を含む、足立区・葛飾区・荒川区・墨田区・江東区・江戸川区などの『低地帯』は、表層地盤増幅率(J-SHIS Map)が高く、大地震の際には震度7の揺れとなる可能性があります。
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【第3問】最も新しい時代に堆積した柔らかい地層
最も新しい時代に堆積し、固まり切っていない軟弱な地層の名は?
- 【1】洪積層
- 【2】沖積層
- 【3】岩盤
正解!
不正解...
正解は【2】沖積層です。
沖積層は「最終氷期以降(約18,000年前より新しい時代)に堆積した地層」を指します。最も新しい地層なので固まりきっておらず、沖積層が深い場所は「軟弱地盤」がみられる場所と重なることが多いので、地震の際に揺れが大きくなる可能性があります。
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【第4問】「液状化現象」のリスク
「液状化現象」のリスクとして当てはまるのは、次のうちどれでしょう?
- 【1】ライフラインの断絶
- 【2】不同沈下
- 【3】基礎杭の破断
- 【4】1~3のすべて
正解!
不正解...
正解は【4】1~3のすべてです。
全てあり得ます。液状化現象というのは、柔らかい砂質の地層が地震で揺さぶられることによってドロドロの液体状になる現象です。地面が動いてしまうので、1~3のすべてがありえます。
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【第5問】高台(台地)でも注意が必要な地形
高台(台地)でも注意が必要な地形があります。次のうちどれでしょう?
- 【1】埋没谷
- 【2】盛土地
- 【3】崖地などの急斜面地
- 【4】1~3のすべて
正解!
不正解...
正解は【4】1~3のすべてです。
どれに当てはまっても注意が必要です。埋没谷は大昔の多摩川が流れていた跡で、地中に柔らかい地層が隠れています。盛土地は、過去の地震でも最も被害を多く出した地形です。崖地などの急斜面は、重力に従って風化し崩れることが自然です。自然に反して擁壁等で抑えているだけなのだと認識すべきです。
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【第6問】耐震等級1の建物が耐えられる震度
建築基準法(新耐震)の耐震等級1の建物が耐えられる震度の上限は?
- 【1】どんな揺れでも問題ない
- 【2】震度6強
- 【3】震度5
正解!
不正解...
正解は【2】震度6強です。
建築基準法では「東京を想定した場合、震度6強から7程度に相当する揺れでも倒壊・崩壊をしないで耐えられるもの」を耐震等級1としています。
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【第7問】旧耐震の建物が耐えられる震度
旧耐震(1981年以前に竣工)の建物が耐えられる震度の上限は?
- 【1】震度6程度
- 【2】震度5程度
- 【3】震度4程度
正解!
不正解...
正解は【2】震度5程度です。
新耐震が制定される前の建築基準法では「震度5程度の地震で大きな損傷を受けないこと」が求められていました。
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【第8問】基礎杭の主な役割
地盤の悪い場所において基礎杭を打つことで得られる主な効果は、次のうちどれか?
- 【1】不同沈下を防ぐため
- 【2】地震の揺れに負けないため
- 【3】強風で飛ばされないため
正解!
不正解...
正解は【1】不同沈下を防ぐためです。
地盤の悪い場所で、支持層まで基礎杭を届かせる主な効果は「不同沈下」を防ぐためです。柔らかい地盤でも建物が自重で傾かないようにしているのです。
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防災クイズ(一番の基本編)の解説
【第1問】解説
【第1問解説】 《高台(台地)一択》 「住む場所」を地形から選ぶのであれば『高台(台地)』一択です。 関東大震災の際に、低地(下町)で大きな被害に遭った人たちが東京の西の方に逃げてきたことが、杉並区や世田谷区の発展のキッカケとなりました。そもそも武蔵野台地エリアでは被害が小さかったのです。 東日本大震災でも、マンションの被害に違いがみられたのは、「新・旧の耐震基準」の差よりも、「高台や低地」などの地形(地盤)の差でした。高台にあるマンションは、旧耐震の建物でも大きな被害がないというケースが多く見られました。 地震と並び、大きな被害をもたらす“水害”を考えても『高台(台地)』一択です。 当たり前ですが、水は低い方に流れるので、高台で水害に遭う可能性は低いのです。 下図は、国土地理院地図で「土地条件図」を表示し、キャプチャした画像です。オレンジ色の部分が武蔵野台地(=高台)です。 |

【第2問】解説
【第2問解説】 東京東部の低地帯は、表層地盤増幅率が高いので、地震の際に震度7となる可能性があります。 《地震被害の法則》 ▼地面が大きく揺れる ↓ ▼建物も大きく揺れる ↓ ▼建物が損壊する ▼タンス等の家具が倒れる 当たり前の話ですが、地面が大きく揺れなければ、建物が壊れることもありません。 揺れが大きくなければ、家具が倒れてきて家族が負傷することもありません。 “震度7”の揺れが襲う可能性があるエリアを避けるだけで、家族の命を守れる可能性は高まります。 では、その「“震度7”の揺れが襲う可能性があるエリア」はどうすれば分かるのか? その答えが、J-SHIS Mapの「表層地盤増幅率」です。 「表層地盤増幅率」とは、地震時に表層地盤(浅い地層)が揺れる程度を数値化したもので、1.8以上は地盤が弱いことが推定されます。 下図の紫色のエリアが、地盤増幅率1.8以上となり、大地震の際に揺れが大きくなる可能性が高い場所です。 ※ここでは紫色としていますが、J-SHIS Mapで拡大すると「えんじ色」と「濃いピンク色」に分かれています。 ※J-SHIS Mapの見方はこのリンクをご参照ください。 |

【第3問】解説
【第3問解説】 「沖積層」というのは、専門的な用語ですが、是非覚えていただきたい地層名です。 これは「新しく・柔らかい」という性質がポイントです。 下図は、地質調査総合センター「都市域の地質地盤図」をキャプチャしたもので、色の付いている場所が「沖積層」の堆積エリアとなります。 特に、黄色や黄緑色のエリアは、沖積層が20m以上の厚さで堆積しているところなので、大地震の際には震度7となる可能性があります。 そして、お気付きだと思いますが、【第1問】の表層地盤増幅率が高いエリアと沖積層が厚く堆積しているエリアは、ほぼ重なります。 |

【第4問】解説
【第4問解説】 液状化現象というのは、柔らかい砂質の地層が地震で揺さぶられることによってドロドロの液体状になる現象です。 地中が液体状になって揺れ動くので、標高の低い方に流れる(地盤がズレる)こともあります。 これにより、道路は歪み、上下水道管やガス管が切断されるなど、ライフラインが断絶することがあります。 地面が一時的に柔らかくなるので、基礎杭を支持層まで到達させていない戸建等の小規模建物は不同沈下し、傾くことになります。 支持層まで杭を打っている大規模建物は安心かというと、そうでもありません。 液状化現象では横方向にも土砂が動くので、縦方向のみに深く設置された基礎杭が破断される事態もあり得ます。能登地震で倒壊したビルの姿を覚えている方も多いと思いますが、他の大地震でも基礎杭の破損は確認されています。 ※「東京の液状化予測図」で液状化の可能性があるエリアが確認できます。(下図はキャプチャ画像) |

【第5問】解説
【第5問解説】 [埋没谷] 地質調査総合センター「都市域の地質地盤図」でプルダウンメニューから「東京層下部基底面」を選ぶと色が付いているところが「埋没谷の範囲に該当するエリア」です。 一例を挙げると、世田谷区成城では、地下10mより下に数m~十数mの厚さでN値5以下の地層が連続している場所があります。地中深くに柔らかい地層が隠れているので、地震の際に揺れやすいのです。 ※「地下に「埋没谷」があると、何が悪いのか?」で埋没谷の説明をしています。 [盛土地] 人工的に土砂を盛ることで造成された土地です。 過去の地震でも、最も多くの被害を出しているのがこの「盛土地」です。 そもそも、盛土は斜面を削り、土地を平らに造成するときに行われます。斜めの土地に、後から土砂をくっつける工事なので、崩れやすいのは当たり前なのです。 更に、傾斜地は地震時に揺れが複雑になるという話もあります。 「盛土地」だけでなく、傾斜地にあるマンションには手を出さないのが賢明です。 [崖地などの急斜面地] これも、普通に自然に考えたら、危ない場所だって分かりますよね。 崖なんて、自然にあったら、崩れる方が普通です。雨・風などで風化して、脆くなり、重力に従って崩れます。 何もなくても風化して崩れるような場所が、地震の際に崩れない訳がないですよね。 都内の盛土地や崖地には「擁壁」があるのが通常ですが、擁壁もメンテナンスが必要な建造物です。つまり、築年が古くなると補修が必要となり、修繕費用(保守管理費用)が必要というコスト面の問題だけでなく、メンテナンスしないとその場所の地盤リスクが高くなります。 ※「東京都土砂災害警戒区域等マップ」で危険な傾斜地の場所が確認できます。 |

【第6問】解説
【第6問解説】 建築基準法では「東京を想定した場合、震度6強から7程度に相当する揺れでも倒壊・崩壊をしないで耐えられるもの」を耐震等級1としています。 法律(建築基準法)として想定しているのは、あくまで最低ラインです。 倒壊・損壊しない最低基準は震度いくつなんだ?と問われたら「震度6強」は耐えられる筈というのが正答に近いのではないでしょうか。 更にもう一つ、あまり知られていない基準があり、耐震等級1の建物は「震度5強で著しい損傷を生じない」ことが求められています。 要は、震度5強を超える揺れでは、建物は著しい損傷をしても仕方がないということです。 ↓ これを別の角度から見ると、震度5強以下に揺れが抑えられる可能性があるエリアなら、建物の損壊を防げる可能性が高くなるということでもあります。 下表は「耐震等級と耐えられる地震の大きさ」を視覚化したものです。 下表で把握できる通り、“震度7”の揺れが襲う場所では、「耐震等級3」の建物でも損壊する可能性があるのです。 ↓ つまり“震度7”の揺れが襲う可能性があるエリアを避ければ、建物の著しい損傷を防ぐことができ、家族の命を守れる可能性は高まります。 |

【第7問】解説
【第7問解説】 新耐震が制定される前の建築基準法では「震度5程度の地震で大きな損傷を受けないこと」が求められていました。 つまり「震度6以上の地震が発生したら倒壊する恐れがある」のが旧耐震なのです。 そもそも、旧耐震だとダメだから“新耐震”を制定したのですから、「旧耐震だけど、リノベーションしているから買ってもいいと思いますか?」と相談してこられるお客様がいらっしゃいますが「絶対にダメ!」としか言えません。 耐震改修工事を済ませた物件ならOKです(非常に稀にしか存在しませんが)。 マンションのリノベーションというのは、通常、専有部分(部屋の内側)の大改修のことです。 建物の構造はリノベーションされていないので、ご注意を。 どうしても旧耐震の建物に住みたいのであれば、大地震が発生しても震度5強以下に収まる可能性が高い(地盤の良い)場所にある物件にしましょう。 それもお勧めはしませんが。 ※東日本大震災では、地盤の良い場所にあった旧耐震の建物の損傷がさほど大きくなかったという調査結果もあります。 「大地震が発生しても揺れが大きくなる可能性が低い(地盤の良い)場所」かつ「新耐震の建物」を選べば、家族が負傷するリスクは小さくなるでしょう。 |
【第8問】解説
【第8問解説】 地盤の悪い場所で、支持層まで基礎杭を届かせる主な効果は「不同沈下」を防ぐためです。 「不同沈下」というのは、地盤の一部が沈下する現象です。 柔らかい地盤の上に重い建物があると、地盤が重さに負けて建物が沈み込んでしまうことがあるのです。 十年ほど前、三井不動産が分譲したマンション「パークシティLaLa横浜」が傾いたと大騒ぎになりましたが、傾いた原因は「基礎杭が支持層まで到達していなかった」からです。 これだけではなく、住友不動産の「パークスクエア三ツ沢公園」等、数年に一度は同様の問題が明るみに出ます。 つまり、建物の各部位を支えている基礎杭が支持層まで到達していないと、一部が沈み込み、建物が斜めに傾く可能性があるのです。 それを防ぐことが「基礎杭」を打つ一番の目的です。 では、地震に対する効果はどうでしょうか。 地盤の悪い場所では、地震の際に地面が大きく揺れます。特に液状化現象が起きる場所では、地中がグチャグチャになります。 下図のように、基礎杭は支持層に向かって真っすぐに打たれており、梁のように横方向の衝撃に耐える機能はありません。 能登地震で倒壊したビルの姿を覚えている方も多いと思いますが、他の大地震でも基礎杭の破損は確認されています。 地震で基礎杭が破損し建物が傾くなどというリスクを避けたければ、地中で土砂が揺れ動くような「液状化の可能性がある地域」かつ「支持層が深い場所(長い基礎杭が必要な場所)」を避けなくてはならないということです。 |

【まとめ】優先順位を間違えないで!
ここまで挑戦していただいた八つのクイズの答えは、一つの防災上の正解に収れんします。 『安全な場所に住むこと』です。 揺れが大きくならなければ、建物も壊れず、家具なども倒壊せず、家族が下敷きになって犠牲になることを防くことができます。 問6でみたように、震度6弱以下に揺れが収まる可能性が高い場所であれば、耐震等級1の建物でも安心感があります。 逆に、問4や問8でみたように、基礎杭が破損する可能性がある場所では、その上の建物が免震構造であろうともリスクがないとはいえません。そもそも基礎が傾いたら、その上にある免震装置など意味をなさないので。 そして、『安全な場所』は、かなり把握できるようになってきました。 「東京の液状化予測図」「J-SHIS Map」「都市域の地質地盤図」「重ねるハザードマップ」等が公開され、誰でもその場所のリスクを調べられるようになりました。 まだまだ地中のことは分からないことが多く、高台(台地)だったら絶対に安全だ、なんていえません。 大地震もいつ発生するのかは誰にも分からないのが現実です。 ですが、新たな知見は学び、現時点で考えられる限りの『安全な場所』を選ぶことが「家族の安全」を守ることに繋がる筈です。 安全な場所にみんなが住むようになれば、大災害が発生した際の被害者数や経済損失を減らせます。 被災した人を助けるために命がけで活動しなくてはならない消防・警察・自衛隊などの若者を守ることにも繋がり、復興のために人員や予算を回せます。 元千葉大学理学部地球科学科教授 水谷武司先生は、 「ゼロメートル低地の利用を抑え台地に市街を拡げていたとした場合、東京区部の自然災害リスクは5分の1程度になると算定される。」 とおっしゃっています。 防災の一丁目一番地は、『安全な場所に住むこと』です。 |
「災害に強い立地=高台(台地)」と認識することが、災害に強い「住まい」を選ぶ際の第一段階です。高台(台地)は、地震の際に揺れにくい土地が多く、浸水もしにくい地形です。江戸や明治の頃、大名や貴族などのお屋敷は高台(台地)にありました。