良い物件の見付け方~まとめた内容をQ&A方式で~

「失敗しない物件選び」をするための条件等を記してきましたが、こちらではその内容をQ&A方式でまとめてみました。

「買い時」に関する疑問

不動産価格が高いというニュースをよく見ますが、“今”不動産を買うと損をするのでしょうか?
買った後、売却を考えず、子孫の代までその場所に住むつもり、というのであれば、買い時は“今”、つまり買おうと思ったときです。不動産は、立地等も含めて、完全に同じものは二つとないので、本当に気に入り、永住したいなら、“買い時”など考える必要はありません。
それに対し、不動産を永住の地ではなく、“資産”と捉えた場合、「出口戦略(数年後の売却)」を視野に入れる必要があります。では、不動産の価格が数年後にどうなっているのか、ですが、短期的には不動産価格は下がる可能性が高いと思っています。

1.不動産相場が天井
不動産の価格は、1991年のバブル崩壊以降、数年のスパンで、上がったり、下がったりする他の金融商品と同じようなマーケットサイクルが見られるようになっています。そして、現在は価格上昇がピークになっている状況(天井)なので、この天井を突き抜けて上昇する可能性は低いと考えます。
※と書いたまま数年が経ちますが、予想の根拠となるデータの方向性が変わらない限り、現時点でも同じ予想をせざるを得ません。
2.年収倍率が10倍超
新築マンションの価格が年収の何倍で買えるかを示す『年収倍率』が2014年から10倍を超えています。年収倍率が10倍を超えると、実需がついてきません。実需とは、実際に住むために購入する一般消費者の需要です。年収倍率(※)が10倍を超えるということは、新築マンションの価格が普通の人たちの手に届かないくらい高額になっていることを意味します。
(株)東京カンテイの「新築マンション年収倍率」
短期的には不動産価格が下落する可能性があるとのことですが、長期的にはどうなのですか?
都心部の不動産価格は一時的に下がることはあれ、長期的には価格は戻る可能性は高いと思います。そのときには価格が今より更に上昇する可能性も考えられます。長いスパンで考えるならば、東京都心部の不動産が下落し続けることは考えにくいです。東京都心部の不動産価格には、一定水準以下に下落すると、下落が止まる“仕組み”があるのではと考えています。
1.価格が調整されると実需が戻る。
東京都心部は不動産価格が下がると、実需が戻り、居住者が戻ってきて、人口が増加します。人口が増加すれば、不動産需要が高まり、不動産価格が上昇することに繋がります。
2.海外投資資金が流入する。
東京都心部の不動産はグローバルな投資対象となっており、価格が大幅に下落すると、裁定狙いの投資資金が流入します。
賃貸の方が有利なのでしょうか?
現在の相場を前提に、同レベルのマンションを
○10年間賃貸
○購入した上で、10年後に売却
の2つのケースを比較して、イニシャルコスト(初期費用)とランニングコスト(毎年掛かる費用)の合計(総支出)をシミュレーションすると、10年後の売却価格が購入した価格と比較して30%以上下落すると、賃貸の方が総支出が少なくなります。
住宅ローン金利が史上最低水準であることや、住宅ローン減税等の政策的な後押しがあるため、逆に言えば10年で30%以上価格が下落しなければ、購入した方が“得(総支出が少ない)”です。
※地域や物件により結果は異なります。シミュレーションしましょう。
では、10年後に価格が30%以上下落する可能性はどれくらいあるのか?
築10年のマンションを買って、10年住むと、売却する際には「築20年」のマンションとなっています。不動産の市況が一定でも、築年が古くなるほどマンションは安くなるので、築20年となったマンションの売却価格は買ったときと比較して10%以上下落するのが通常です。後は、不動産市況の下落がどれくらいになるか、です。
将来を見通すのは不可能ですが、過去20年の不動産市況を見ても、リーマンショックの後には東京都心部のマンション価格は20%ほど下落しました。
なので、20%の下落というのはあり得ないことではありません。
ただ、1991年のバブル崩壊後に底を打って以降は、それ以上の大きな下落には見舞われていません。過去20年ないからと言って、今後もないとは言えないですが、上述の通り東京都心部の不動産が長期的に下落し続けるとは考えにくいです。
※以上は、当法人の意見です。購入等の判断は、自己判断でお願いします。

「立地」に関する疑問

こちらでは「高台」を勧めていますが、「高台」を選ぶメリットを教えてください。
当法人では基本的には「高台」にある物件をお勧めしています。理由は、以下の2つです。
reason
1.地盤がいい可能性が高い

まず、公開されているボーリング調査の結果を見ても、高台の方が地盤がいい可能性が高いことが挙げられます。また、大正期の関東大震災の分析でも、低地は高台と比較して震度が1ほど大きかった(揺れが大きかった)のではないか、と言われています。
2.浸水の可能性も低い
「液状化の可能性のある地域」に指定されている場所は低地が多く、また、最近想定外を更新する勢いの豪雨を考えても、低地は浸水の可能性が考えられます。下水管の処理能力は、1時間50mmまでを想定していると言われており、この処理能力を超えるゲリラ豪雨が発生すると道に水が溢れる可能性があります。
これからは駅から7分以内じゃないとダメという情報を見たのだけれど?
東京都心部の不動産に関しては、さほど気にしなくていいのではないかと思っています。一つの駅から7,8分も離れると、他の駅へも10分以内で行けることが多いですし、スーパーマーケットの近さや夜の静けさ等の住環境をより重視した方がいいのではないかと思っています。
お墓が見える物件は安くなるの?
安くなります。その他、学校、清掃局、公園の近くや、幹線道路沿いなども、居住用物件においてはマイナス要素です。
逆手をとって、これらの他の人が敬遠しがちな条件の中で、自分は気にならないという条件があれば、少し安い物件を手に入れるチャンスと捉えることもできるかもしれません。但し、買う際には掘り出し物だと思っても、売却を考えた際には、そのマイナス要素の分、安くなったり売れにくい状況になることを覚悟する必要があります。
絶対に避けたい立地はあるか?
不動産は、すべてのリスクを包含して価格に反映されるので、大きなリスクがあっても、それが価格に反映されていれば(安くなっていれば)、需要はあるものです。(東京都心部の不動産を前提としますが)
ただ、擁壁が設置され敷地が盛土の物件は、あまりお勧めしていません。地震の際の倒壊リスクという意味だけではなく、保全費用も余計に掛かるので、ランニングコストも高くつく場合が多いためです。
また、液状化の可能性のある地域や、河川の流域もお勧めしていません。地盤が悪い上に、浸水の可能性も考えられるためです。
これらの立地にある物件を買う場合には、そのリスクが反映された安い価格になっていることが前提となると思います。
「高台」なら安心なのか?
熊本地震で注目されることになったものの一つに『表層地盤』というものがあります。文字通り、地表に近い地盤の固さのことですが、東京都心部の地盤は、武蔵野台地の上のいわゆる「高台」でも、熊本地震で大きな損害の出た益城町役場の周辺と同じくらいの柔らかさらしいのです。つまり、高台であっても、熊本地震と同じ揺れが発生したら、熊本以上に住宅が密集しているため、より大きな損害が出る可能性があるということです。
低地や谷地と比較したら、「高台」の方がお勧めですが、高台であれば旧耐震の建物でも問題ない、というような考え方には賛成できません。「高台」であっても、できるだけしっかりと建物の性能を見極めたいものです。
「低地」でも、新耐震の建物なら安心か?
建物の安全性を考える場合、建物の形状も考慮に入れる必要があります。ここでは、技術的な裏付けは脇に置き、普通に考えまして、横長のどっしりとした形状の建物と、縦に細く伸びる建物のどちらが揺らした際に倒れやすいかと考えますと、後者だと思います。
「低地」であっても、新耐震かつ横長のどっしりとした形状の建物であれば、地震の際の倒壊・損壊リスクは低くなるのではないかと思います。縦に細長い形状の建物の場合は、新耐震でも築年が古いものに関しては、耐震診断をしたことがあるか管理組合の議事録等で確認することをお勧めします。ただ、縦長の形状でも、東日本大震災後に竣工した築浅の建物であれば、地震の際のリスクは低いとみていいのではないかと思っています。

「戸建て」よりも「マンション」の方がいい?

マンションよりも一戸建ての方が安い気がするんだけれど?
東京都心部で専有面積当たりの価格で比較すると、確かに一戸建ての方が安い物件も多いことに気付きます。そのようなマンションよりも平米単価で安い一戸建てには、安いだけの理由があります。

1.敷地が狭い

狭い敷地に3階建の木造建物を建築している。(土地の比率をできるだけ下げ、建築単価の低い木造であることが特徴)
2.直下率が低い
直下率が低いことが多い。直下率とは、一階と二階で重なっている柱や耐力壁の割合のことです。具体例を挙げると、一階に広いリビングルームがあり、二階が細かく部屋に分かれている家。三階建てだと、一階に駐車スペース、二階がLDK、三階が二部屋という家などは、『直下率』が低い家の典型例です。
3.耐震等級が“1”
物件案内チラシに耐震等級の記載のないことがほとんどです。
熊本地震では、2000年基準(最新の建築基準法の耐震基準)で建てられた2階建木造住宅が倒壊しました。この建物は、直下率が低かったことが指摘されています。施工不良もあったとされており、直下率の低さが直接の倒壊の原因ではないと思われますが、直下率が高い方が倒壊する可能性は低いと考えられます。
また、マンションと比較して専有面積当たりの価格が安い一戸建て住宅は、高い耐震等級を取得していないことがほとんどです。
木造住宅で、縦長の形状、かつ直下率の低い、耐震等級が“1”の建物は、いつあるか分からないと言われている大地震の際の倒壊・損壊リスクが高いと思われます。
→直接的に「倒壊する可能性が高い」という訳ではなく、他の建物と比較して、“多少”リスクが高いと思われる、ということです。
→マンションの耐震等級もほとんどが“1”です。ただ、木造とRC造では、同じ耐震等級でも建物のダメージには差があると考えられます。
一戸建ての方がマンションより良いと断言できる点を教えて。
その場所に永住するつもりなら、一戸建ての方がお勧めです。

「処分・変更の自由度」が高いためです。マンションのように、所有権が制限されることなく、建替えも模様替えも自分一人の意思で自由自在です。それに対して、マンションは、所有権と言いつつ、模様替えさえ管理組合の承認が必要であることが多く、建物が老朽化した場合の建替えとなると、ほとんど不可能といわれるほど高いハードルがあります。その場所に永住し、子供や孫が「帰ってくる場所」としたいのであれば、一戸建てでないと実現は難しいでしょう。
マンションの方が良いと思われる点を教えて。
価格が1億円以下のマンションと一戸建てを比較した場合、マンションの方が比較的安心できると思えるのが、「耐震性」「防犯性」「居住性」です。
○耐震性
「耐震性」については、建物によるのですが、一般的にはマンションの方が安心できるものが多いです。東京都心部で1億円以内で買うことのできる一戸建てとなると、いわゆる狭小住宅であり、直下率の低い、縦長の形状の木造3階建てであることがほとんどです。熊本地震以降、このような木造住宅は、あまりお勧めしたいと思わなくなりました。
※倒壊すると言っている訳ではありません。ただ比較すると、少しリスクが高いのではないかと思っているということです。
○防犯性
これもマンションの方が安心できるものが多いです。TVモニター付インターホンや宅配BOX等の居留守を使うことのできる設備や防犯カメラ等の防犯設備の有無もさることながら、犯罪者が生活リズムを把握するのが難しいという面もあるのではないかと思っています。犯罪者の多くは、侵入しようと考えると、その対象の家を下調べし、居住者の生活リズム等を把握するという話があるので。マンションは、侵入自体もしづらい上に、居住者の下調べも難しいことから「防犯面」で、一戸建てより比較的安心だといえると思います。
○居住性
マンションの多くは、ワンフロアに部屋があり、急な階段を上り下りせざるを得ない3階建てよりも使い勝手が良いと思います。3階建ての木造住宅に住んでいる私の友人の奥様も、洗濯物を干そうとして階段で足を踏み外しケガをしていました。
マンションの方が良いのか?
上述の通り、永住を考え、子孫にもその土地を譲りたいと思うなら、一戸建てを選ぶべきです。マンションは、所有権に制約があり、建替えが難しいことからも、永住を想定する居住形態ではないと思います。多くの場合、賃料を払い続けるよりも安く住めるので、『一定期間そこに住むための賃料の前払い』くらいの意識でいるのがいいと思います。
売却を前提とした考え方に同意いただけるなら、耐震性・防犯性等の観点からもマンションの方がお勧めできることが多いです。東京都心部に住む、という選択肢を考えた場合は、マンションの方が良いといえると思います。

どんな「マンション」がいいのか?

旧耐震の建物は避けた方がいいのか?
できるなら、避けた方が無難でしょう。

1.過去の大地震で、旧耐震の建物は、新耐震の建物と比較して、倒壊・損傷する可能性が高かった。

2.設備等が古い。
3.マンションは建て替えが難しく、耐用年数を超えた時に、売るにも売れない状況になる可能性がある。
特に、地盤の悪い場所(低地・谷地等)にある、旧耐震の建物である物件はお勧めしていません。(というより、積極的に諦めることを進言しています。)
マンションは「管理」で買え、という言葉があるが、どうすれば管理の良い物件を見分けられるのか?
基本的には、最新の管理組合の議事録を見せてもらうことが必要だと思います。ただ、管理組合の議事録には個人情報が含まれる場合があり、買付証明書を出してからでないと見せてもらえないことが多いと思います。
また、築10年以内の築浅のマンションは、管理や修繕に問題が起きていない可能性が高く、この時期の管理組合の議事録を見ても、管理の良し悪しを判断するのは難しかったりします。(勿論、意見が活発に交わされていたり、管理会社の評価をしたりといったやる気のある管理組合はたまにありますが、活発な意見交換がないからと言って、築浅の物件の場合はダメな管理組合だとは判断できないと思います。)
○買付証明書を出す前に、ある程度管理の良し悪しを判断する方法
内見時に、自転車置き場やゴミ置き場等が整理整頓されているか、エントランス付近がきれいに清掃されているか等をチェックするとともに、管理会社がどこか確認します。築10年以上経つのに、分譲時のディベロッパーの関連会社のままである場合は、あまり管理組合が活発でない可能性があります。
※管理組合で議題に上げて、議論した上で現在の会社を継続となっている場合は、これに当てはまらないので、あくまで目安と考えてください。
[注意]築15年、築30年前後で売りに出ているマンションについて
マンションは、築15年、築30年前後に大規模修繕を行うことが多いです。その大規模修繕を行う際に修繕積立金が足りないと修繕一時金を各戸から徴収したりするのですが、そうなる見通しになってから追加の一時金を支払うのが嫌で売りに出す場合があります。こういう物件を買うと、買ってすぐに予定外の追加費用を徴収されることとなるので、管理組合の議事録をチェックして、大規模修繕工事のスケジュールと工事費用は積立金の範囲内に収まっているか等を確認する必要があります。
お買い得な物件はどうすれば見付けられるのでしょうか?
お買い得な物件を見付けようとは思わない方がいいのではないかと思っています。

「お買い得な物件を探すには、不動産屋を回るのがいい」と書かれているものを目にします。これに関しては、半分は正解だと思います。訪問した不動産屋で、こちらが気に入る物件がたまたま仕入れられた等の奇跡が起きる可能性はあるので。奇跡がないとは言いませんが、それ以外の場合は、「こっちの物件はどうですか?」と他の物件をしつこく勧められることになるだけでしょう。
自分にしっかりした価値基準があり、不動産屋の甘い言葉には乗せられないという自信がある方なら、奇跡を求めることを止めません。
また別の観点から申しますと、継続的に数億円の取引があるお客様なら話は別ですが、一見のお客様に、とっておきの情報を渡すほど、普通の不動産屋はお人よしではないです。
「安い」不動産には、安いなりの“理由”があります。不動産屋の言いなりになるのではなく、その物件の良し悪しを判断して、「納得ができる不動産探し」を心掛けていただけたらと思っています。不動産の良し悪しの分析が難しければ、不動産鑑定士という不動産を査定する専門家の力を借りることを考えてもいいと思いますし、建物に不安があればインスペクション業者、住宅ローン等生活設計に関してはファイナンシャルプランナーといった専門家を活用いただきたいと思っています。
不動産を売りたいと思っている業者に生活設計を相談しても、第三者的な意見をくれるとは思えません。下手に物件を選ぶと、何百万円も損をすることがあります。公平な意見をくれる専門家を活用することを検討していただきたいと思っています。
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