『使用貸借』は、評価をするといくらになるのか?

以前、「使用貸借」の評価をしました。親の土地をタダで借りて、そこに賃貸アパートを建てているというケースです。

賃貸アパートの評価は、普通に建物の評価(原価法と収益法)で行いますが、タダで借りている土地の方の評価をどうするかが問題です。

「使用貸借」というのは、地主(親)から「返せ」と言われたら、建物買取請求権さえ認められずに返さないといけない弱い権利です。この権利に価値を認めるか、認めるとしたらどれくらいかという問題です。

まず、「使用貸借」は、原則として相続できませんし、国税庁も価値を認めていません

では、価値はないのかというと、そこに建物を建てることができていて、その建物が存在する限り収益を生む訳ですから、ゼロというのも乱暴に思えます。

では、どれくらいの価値を認めるべきでしょうか。

まず、土地を使用する権利であり、所有権に劣るものとして「借地権」があります。これも、その土地に自分名義の建物を建てて、その収益を得ることのできる権利です。この「借地権」は、建物の登記がされていること等により地主に対して対抗力を持つ強い権利です。
※簡単にするために、色々すっ飛ばしていますが、大筋としてはこんな感じです。

となると、「借地権」と違い地主に対する対抗力を持たない「使用貸借」「借地権」を上回ることは絶対にないということが分かります。

そして、「公共事業の用地買収の使用貸借権に対する補償割合が、借地権価格の1/3」(公共用地の取得に伴う損失補償基準)とされていることを考察しますと、これは、親子でも何でもない人が立ち退きを迫る場合(公共事業)の金額なので、この金額が上限になるのかなと思っています。

では、下限はというと、土地を利用することによる利益(借り得)の下限、つまり固定資産税及び都市計画税の建物の存続期間における合計額の現在価値となると思われます。

その上限及び下限の間で、

▽当該使用貸借が、相続における「特別受益」にあたる程度

▽相続が起きる可能性

等を勘案して「使用貸借の価格」を算定することになると考えています。

この最後の相続関連の“程度”の精緻な査定は困難ですが。