「地歴」というものがあります。
文字通り、その土地の歴史です。主に、その土地が過去どのような利用(住居や店舗、工場等)をされてきたのかを表すものです。
不動産鑑定の現場では、対象不動産の「地歴」は必ず調べます。
そこで土壌汚染が疑われるような利用をされていた過去(ガソリンスタンドやクリーニング店等)が見付かると、リスクに応じて減価します。
ここまでは、そりゃそうでしょう、という話だと思うのですが、最近、簡単な評価を相談されたのが昔「三大貧民窟」と言われていた場所にあるマンションです。
資産価値に影響するか?
ここで問題となるのは、昔「貧民窟(スラム)」と言われていた場所に建てられた物件は、このことを理由として減価すべきか?ということです。
昔そういう場所であったというだけで、「ガソリンスタンド」や「クリーニング店」等のように土壌を汚染する物質を実際に出していた訳ではない、ということです。
物理的には、何の問題もありません。ある意味『風評被害』ですよね。
●これは、マイナス評価をするべきなのでしょうか?
●するとすれば、どのような理由からでしょうか?
結論からいうと、評価として「マイナスはある」とせざるを得ないと思います。
不動産の価格を決定する要因の一番大きな部分を、その不動産に対する“需要”が占めるという大原則からすると、その土地を忌避する層がいるという事実自体がマイナス要素とすべきなのだろうと思います。
ここでは、純粋に経済的な話をしています。倫理面や人道面、教育的観点などなど他の多くの視点からはひどい話だと思いますが、そこの物件の購入を検討している方には伝えるべき情報だと思っています。 |
マンションの「資産価値」という場合、何年か後の「売却」という出口を考慮しない訳にはいきません。その「売却」ということになった場合のお客様(買ってくれる方)にとって、マイナス要素がない方が高値で売れる可能性が高いですよね。
マンションの立地が高台ではない、とか、神田川の流域である等のマイナス要素と同じように、地歴もまた消すことのできないマイナス要素(需要を狭める要因)です。
マイナスの大きさ
ここで問題となるのが、そのマイナスの大きさです。どれほどのマイナスがあるのでしょうか?
これに関しては、上述しました潜在顧客層を考えてみたいと思います。
[一般人が住宅ローンで購入するレベルの物件]
この潜在顧客層は、一番層が厚く、人数も多いので、「利便性が高ければ地歴はあまり関係ない」という方も沢山いるでしょう。
※別の言い方をすれば、昔のことを知らないで買ってしまう人(不動産屋は聞かれないことには答えません(^o^))の層も厚いので。
なので、エンドユーザー(一般消費者)向けの物件であれば、マイナス幅は“わずか”であると査定してもいいと思います。物理的には問題がないので(低地であること等はまた別の問題として)。
[高級物件]
高級な物件は、また別の視点が必要となります。“高級”であるという要素の中に、「地歴」も含まれると考えるべきです。
外国人に売却するのであれば、ほとんど問題にならないと思いますが、外国人はその時のマーケットの良し悪しに大きく影響されます。
通常の高級物件向けのマーケットを考えた場合、「地歴」の悪い場所は避けるべきです。
結論
実は、この簡単な評価の対象となったのは『高級路線』のマンションでした。分譲が始まったときも、「なんで、この場所でこの路線なのか?」と疑問に思ったものでした。
分譲価格も強気だったので、資産価値という面では難しい物件だと思っています。将来的には、高級プレミアムは剥がれ、一般向け物件レベルに価格が下がる可能性もあると思っています。