不動産取引における重要事項説明書に記載のある法令(21~40)

この項では、(財)全日本不動産協会が作成している「重要事項説明書」に記載のある「都市計画法、建築基準法以外の法令に基づく制限」の土地区画整理法以外の法律についての説明その2です。

「区画整理法」については(というほど詳しく説明していませんが)、こちら。
「都市計画法、建築基準法以外の法令に基づく制限その1(法令2~20)」はこちら。
「都市計画法、建築基準法以外の法令に基づく制限その3(法令41~58)」はこちら。

【注意点1】以下の説明では、法令の大まかなイメージを掴んでもらうことを目的に、正確性よりも「分かり易さ」を優先しています。法令の正確な内容については、改めて調べてください。【注意点2】不動産取引の目的としては東京都区部にある「中古マンション」の売買を想定しています。都区部以外や土地や戸建ての場合には、更に掘り下げる必要のある法令もあるので、お問い合わせください。

【注意点3】建築に規制をかける法令に関しては「中古マンションの取引にはほとんど関係ありません。」と記載していますが、再建築を視野に入れるほどの築古物件の場合には、土地取引と同等の説明が必要です。

21.港湾法

文字通り「港湾」の整備や適正な運営等を目的とした法律です。東京都区部の「中古マンション」の取引の際に制約となることはありませんが、「港湾隣接地域」に敷地の一部が掛かっている場合には、建替え等の際に制約を受ける可能性があります。

22.住宅地区改良法

これも、木造住宅密集市街地の解消を目指す法律です。特に老朽した不良住宅が密集している地域で、自主建替えが見込めない場合に適用されることがあります。

住宅地区改良事業が施工されている区域にある不動産の取引の際は、当該事業の内容を説明してもらうことが必要です。ただ、「中古マンション」の取引の際は、当該事業が終了していることがほとんどですから、さほど気にする必要はないと思います。

23.公有地拡大推進法

一定規模以上の土地を売買する場合は、地方自治体に届出をしないとなりません。土地取引の場合に制約される場合のある法律なので、「中古マンション」の取引の際には関係ありません。

24.農地法

「農地」を譲渡する場合には、農業委員会や地方自治体の許可を必要とすることを定めた法律です。「中古マンション」の取引の際には関係ありません。

25.宅地造成等規制法

東京都区部でも、世田谷区や板橋区には「宅地造成工事規制区域」に指定されている区域があります。

当該法は、宅地造成に伴う崖崩れや土砂の流出による災害を防止することを目的とし、宅地造成に伴い災害が生ずるおそれの大きい土地の区域を「宅地造成工事規制区域」として指定することができるとしています。

これも宅地造成工事の際に規制を掛ける法律ですが、当該法の対象となるということは「災害リスクの大きい場所」と言われているようなものなので、当該区域にある物件には原則として手を出すのはやめましょう。

26.マンションの建替え等の円滑化に関する法律

以前は、自分の土地に建物を建てるのは個人(法人)の勝手だろ、とばかりに好き勝手をする輩がいて、景観が損なわれるような事態が生じたもので「規制しよう」となったものです。

なので、これも建築を制限する法律です。この法律により「景観計画区域」等に指定されたエリアは珍しくないですが、「中古マンション」は、建築する際にこの規制をクリアした筈なので、取引の際はほとんど関係ありません。

27.都市公園法

上野恩賜公園や井の頭恩賜公園などが都市公園(都立公園)の典型例です。それ以外の公園も含めて、公園の環境や景観を維持するための法律です。公園内に施設を設ける場合等に地方自治体の許可が必要となります。

これも、関係あるとしてもマンションを建築する際に制限される法律なので、完成した建物である「中古マンション」の取引の際は影響ありません。

28.自然公園法

優れた自然風景を保護するために、各種の開発行為を規制するための法律です。東京都区部に自然公園はありません。

29.首都圏近郊緑地保全法

首都圏の近郊整備地帯において良好な自然の環境を有する緑地を保全するとともに、無秩序な市街地化を防止することで、首都圏の秩序ある発展に寄与することを目的とした法律です。東京都区部に「近郊緑地保全区域」はありません。

30.近畿圏の保全区域の整備に関する法律

これは29の法律の関西版です。

31.都市の低炭素化の促進に関する法律

低炭素化に資する建物を建てて、低炭素建築物と認定されると、延床面積の一部の容積率への不算入が認められたり、税金が軽減されたりする要件や手順を定めた法律です。

当該法の認定を受けた建物は、環境に配慮した造りとなっているでしょうから、プラス要因と捉えていいと思います。

このようなプラス要因となる法律は、普通の仲介業者も説明(アピール?)してくれるでしょうから、説明が漏れる心配は少ないと思います。

32.水防法

水防管理者(地方自治体等)は、洪水浸水想定区域内で、浸水の拡大を抑制する効用があると認められるエリアを「浸水被害軽減地区」として指定できます。
そして、この「浸水被害軽減地区」内において、土地の掘削や土地の形状を変更する行為等をしようとする場合は、あらかじめ水防管理者にその旨を届出しなくてはなりません。

ということは、「浸水被害軽減地区」であっても、洪水浸水想定区域内であるということなので、昨今の“想定外”の頻発を思い起こしても、浸水リスクの高いエリアということになります。原則として当該区域にある物件には手を出すのはやめましょう。

33.下水道法

これはザザッと端折ると、内水氾濫のリスクが高いエリアを「浸水被害対策区域」と指定し、民間の雨水貯留施設も活用して浸水に備えよう、という制度です。

ということは、当該法の適用があり、当該区域に指定されている地域は「浸水リスク」の高いエリアということです。原則として当該区域にある物件には手を出すのはやめましょう。

34.河川法

河川法で指定された区域(河川立体区域等)で、土地の掘削や建物を建てたりする場合には、河川管理者の許可が必要であることを定めた法律です。

これも建てる前の土地に対する制限なので、「中古マンション」の取引の際はほとんど関係ありませんが、「河川立体区域」等に該当している場合には、その場所は河川の流域内であることを認識しましょう。

35.特定都市河川浸水被害対策法

市街化により対策が取りにくく、水害発生時に大きな被害をもたらす可能性のある河川及びその流域を「特定都市河川及び特定都市河川流域」と指定して、雨水を貯留浸透させる努力義務を課し、雨水浸透阻害行為を行う場合に東京都の許可を必要とすることとされています。

東京都では鶴見川及び境川流域が指定されていますが、東京都区部には当該法に指定された区域はありません。

36.海岸法

海岸の保護等を定めた法律です。東京都区部の「中古マンション」の取引の際に制約となることはありませんが、「海岸隣接地域」に敷地の一部が掛かっている場合には、建替え等の際に制約を受ける可能性があります。

37.津波防災地域づくりに関する法律

津波による浸水の想定について、当該法に基づき都道府県が「津波浸水想定」を公表することになっています。なお、当該法により指定される「津波災害警戒区域」及び「津波災害特別警戒区域」とも、東京都に該当区域はありません。

38.砂防法

土砂崩れや土石流を起こしやすい地域の土地を安易に工事し地形を変えると、大地震や豪雨の際に大災害を引き起こしかねません。なので、リスクのある土地を「砂防指定地域」として指定し、宅地の造成や土砂の廃棄等をする場合に、都道府県の許可を必要としています。

都区内に「砂防指定地」に指定されている箇所はありません。

39.地すべり等防止法

地すべり等の被害をなくすために、「地すべり防止区域」を指定して、地下水や地表水に影響を与えるような行為をする場合に、都道府県の許可を必要としています。

都区内に「地すべり防止区域」に指定されている箇所はありません。

40.急傾斜地法

急傾斜地の崩壊による災害を防ぐために、切土・盛土などの一定の行為を制限する法律です。傾斜度30度以上の斜面を「急傾斜地」とした上で、崖崩れや崖崩れが誘発される恐れのある場所を「急傾斜地崩壊危険区域」として指定しています。


東京都建設局のページから拝借した画像

東京都区部にも、当該区域は存在します。要は「リスクのある場所」という意味なので、当該区域内の物件には手を出さないようにしましょう。

【横に逸れた話】
長くなったので41の法律以降は、別ページにします。この21~40には、東京都区部にある「中古マンション」の取引の際でも非常に重要な法律が含まれていましたね。そもそも、この法律に基づく制限は、重要事項説明書の「前半のハイライト」といっていい箇所です。「住むにはリスクがある場所」であるということを示してくれているので。

例えば、弊社のある新宿区の曙橋でも、地下鉄の駅のすぐ近くに「急傾斜地崩壊危険箇所」があります。これらの危険地帯はホームページでも公開されていますので、是非活用してください。

東京都土砂災害警戒区域等マップ
新宿区ハザードマップ