重要事項説明書の簡単解説! 02

重要事項説明書』のチェックポイントを解説するシリーズの第二弾です。
※第一弾は、こちら

重要事項説明書をチェックする際の注目点

区分マンション向け「重要事項説明書」のチェックポイント(続き)です。
※ 戸建て、土地の場合は、必要な条項等が格段に増えますので、別途ご相談ください。


ここは、登記事項証明書の内容がそのまま記載されている筈です。

権利部(甲区)

中でも、この権利部(甲区)に所有権以外の権利の記載がある場合は“要注意”です。というより、もし登記事項証明書の甲区に「所有権移転仮登記」や「差押」の登記があるような物件をしれっと売り物にするような業者は、その「仮登記」等の記載のない古い登記事項証明書を添付することが考えられるので、添付される登記事項証明書の取得日が最新かどうかを確認しましょう。

更にいうなら、添付される登記事項証明書をアテにするのではなく、自分でも登記事項証明書を取りましょう。それなら偽造された登記事項証明書を見させられる心配もなくなります。甲区に所有権移転を阻害するような権利がないことを確認することは、不動産取引において、一番基本的で、最も重要なことです。

通常は、買主側のサポートをする業者が最新版を取得し、甲区の権利について確認している筈です。もし、こんな基本的なこともしない業者がいたとしたら、それは本当に付き合わない方がいい業者です。

権利部(乙区)

ここには、古い物件で売主がローンを払い終わっているとか、そもそも現金で購入した等でない限り、「抵当権」の記載があることがほとんどです。そして、この「抵当権」は「残金決済・所有権移転・引渡し」の際に、所有権移転登記と同時に売主の「抵当権抹消登記」がされ、新たに買主の「抵当権」が設定されます。

抵当権」以外の権利の記載がある場合は、業者に質問をして、問題のないことを確認します。

区分所有マンションの場合、ここで問題になることはほとんどありません。区分所有法が施行される前の古いマンションだと変な権利が存在することがありますが、マイナーな話の割に長くなりそうなので割愛します。気になる記載があった場合には業者に確認してください。

ただ、借地権である場合には、その借地権の契約期間について確認が必要です。
※ 借地権マンションについては長くなるので、以前の記事をご覧ください。

ここで改めてですが、本サイトは「東京都区部」の「中古分譲マンション」をターゲットにしている方向けに書いています。なので、「市街化調整区域」等は説明を割愛します。

また、この都市計画法に基づく制限は、建物の建築をする際によくよく確認しないとならない項目なのですが、建替えを想定しない「中古分譲マンション」の売買においては、戸建てや土地の売買と比較すると、あまりリスクを感じないことが多いです。

都市計画施設

但し、敷地の一部が「都市計画道路」に指定されている場合は、注意が必要です。将来、都市計画道路事業が実施されて敷地の一部が道路に収用された場合、敷地が狭くなることで建物が「既存不適格」になることがあります。

容積率オーバーの「既存不適格」建物になってしまうと、将来同じ規模の建物は建てることができないので、建替えは非常に困難になります。

この欄も建物を建築する際に確認を必要とする項目が並んでいます。既に建物が存在する上に建替えはほとんど考慮しない「中古分譲マンション」の場合には、さほど気にする部分はありません。とはいえ、該当した場合には少しだけ気にした方がいい点を以下に触れます。

用途地域

用途地域が商業地域の区域に建つマンションの場合、周辺が騒がしいことがあり、工業地域系の区域の場合、トラックなどの通行が多い場合があるので、現地調査で確認が必要です。

と書いておいてなんですが、商業地域等に限らず、現地調査は必ず複数回行ってください。

建蔽率・容積率

既存建物である中古の場合、気にするのは上述した「既存不適格」になっていないかどうかですが、もし「既存不適格」であるからといっても住めない訳ではありません。デベロッパーが建築確認申請の際に数字をごまかす等の悪行をしていない限り、「既存不適格」だからといって取り壊しを行政から求められることはありませんので。

私道

建物の前の道路が「私道」である場合は、注意が必要です。まずは、その「私道」が第三者の所有ではないかどうか、です。

「私道」の持分をマンションが保有せず、完全に第三者の名義だった場合、車の通行を禁止されたり、通行料を払えと急に言われたりするケースがありえます。

さすがにマンションの接面道路が完全に第三者のものというケースはレアだと思いますが、持分を持っていてもトラブルに巻き込まれることがあります。

持分の全部をもっていない場合に、他の所有者との間で私道の保守管理について協定を結んでいないと、道路の補修や上下水道管の工事等が必要となる度に揉めたり、ハンコ代を要求されたりする可能性があります。

また、持分の全部を保有していても、その私道の保守管理については管理組合の責任となりますので、公道に面したマンションと比較すると、余計な費用が必要となります。これは、管理費や修繕積立金を低く抑えることが難しいことを意味し、その費用が将来に渡って必要となる分、現在価値としての当該マンションの価格は安く計算されることになります。

ここも同じです。道路は、建物を建てようとする場合に、非常に大きな影響を与える要素なので、不動産の評価をする際には念には念を入れて調査するのですが、既存建物で建替えを想定しない場合には、都市計画道路や私道に該当しない限り、さほど問題とはなりません。

しかし、築年が非常に古いヴィンテージ・マンションなどの売買の際には、これらの項目について、詳しい説明が必要だと思います。

[愚痴なので飛ばしてくださっても結構です]
この都市計画や道路の部分は、戸建てや土地の取引の際には非常に重要な項目ですが、中古マンションの場合には、問題がある時だけ記載するようにしてもいいと思うのですが。でも、問題があっても、それを記載せず、説明もしようとしない業者が多かったから、このような仕様にしているんですものね。

結局、不真面目な、詐欺的な業者がいるせいで、真面目に商売している業者の手間が増えてしまうんです。

このページに記載されている法令に該当する場合、その制約を受けます。

土地区画整理法

これだけ大きなスペースを取っていますが、「中古マンション」の取引の際にはあまり重要ではありません。確かに土地の取引で区画整理の対象になっている場合は、大きな影響を受けますし、詳細な説明が必要です。ただ、中古マンションの場合、仮に区画整理事業地内にあっても既に建物が建っている状態ですので、換地処分も終わっている状態でしょう。

その他の法令について、全部を説明すると非常に長くなってしまうので、東京都区内で「中古マンション」の取引をする際に該当する可能性のあるものを中心に触れます。
※ その他の法令については、ページ下部のリンク先をご覧ください。

宅地造成等規制法(重要)

当該法にチェックがしてある場合には、取引そのものを見直すことをお勧めするくらい重要な法令です。そもそも、当該法が規制する「宅地造成工事規制区域」にある物件をお客様に勧める買主側業者が信じられません。

災害リスクがある場所だから「宅地造成工事規制区域」に指定しているのであって、昨今の“想定外”のオンパレードをみても、リスクがあると分かっている場所にわざわざ住もうとするのはいかんと思います。

何度も言っていることですが、『住まいは、家族の“命”と“財産”を守るところ』です。リスクが大きいと分かっている場所は、コストパフォーマンスとは切り離して、切り捨てていただきたいと思っています。

マンションの建替え等の円滑化に関する法律

これはマンションであれば、全ての物件に該当します。マンションの建替え等に係る要件や手続きなどを取り決めた法律です。築浅のマンションを購入する際には、あまりピンと来ないかもしれませんが、建物には寿命があるので、早めに買換えを検討する方以外には関わってくる法律です。

水防法・下水道法

これらのどちらかにチェックがある場合、その物件のあるエリアは「浸水リスク」が高いことを意味します。「宅地造成等規制法」と同様、原則として当該区域にある物件には手を出すのはやめましょう。
※ 水防法・下水道法の少しだけ詳細な説明は、こちらの32、33を参照

砂防三法

「砂防法」「地すべり等防止法」「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」の3つをまとめて「砂防三法」といいます。災害から身を守るためには、これらの法律で指定された区域にある物件を選ぶのはやめましょう。

土砂災害防止対策推進法(重要)

都区内にも多く存在する「土砂災害(特別)警戒区域」に引っ掛かる場所にある物件には手を出してはいけません。

「法令に基づく制限」は以上です。これ以外の法令については、別ページにて簡単に説明しています。

「都市計画法、建築基準法以外の法令に基づく制限その1(法令2~20)」はこちら。
「都市計画法、建築基準法以外の法令に基づく制限その2(法令21~40)」はこちら。
「都市計画法、建築基準法以外の法令に基づく制限その3(法令41~58)」はこちら。