重要事項説明書の簡単解説! 03

重要事項説明書』のチェックポイントを解説するシリーズの第三弾です。

重要事項説明書をチェックする際の注目点

区分マンション向け「重要事項説明書」のチェックポイント(続き)です。
※ 戸建て、土地の場合は、必要な条項等が格段に増えますので、別途ご相談ください。


重要事項説明書の簡単解説!02」でもふれました建物の前の道路が「私道」である場合は、注意が必要です。そして、ここでは、その「私道」を対象不動産に含まれるか否かの2つに分けて説明しています。

「対象不動産に含まれる私道」というのは、物件チラシに「面積:150㎡(但し、私道部分を含む)」と記載があるような場合の“私道”です。

なので、この項目は、自分の所有権になっている土地の一部が私道として使用されている場合の、その“私道”について説明することになります。

そして、その私道の所有権を複数で持ち合っている場合、その持分割合や保守管理に関する協定の有無、保守管理に要する分担金の有無や金額が記載されます。

この保守管理に関する協定がない場合、道路の補修や上下水道管の工事等が必要となる度に揉めたり、ハンコ代を要求されたりするトラブルに巻き込まれる可能性があります。

また、持分の全部を保有していても、その私道の保守管理については管理組合の責任となりますので、公道に面したマンションと比較すると、余計な費用が必要となります。これは、管理費や修繕積立金を低く抑えることが難しいことを意味し、その費用が将来に渡って必要となる分、現在価値としての当該マンションの価格は安く計算されることになります。

[中古マンションの取引では、ないと言っていいレベルの話なので読み飛ばしてくださっても結構です]
私道部分がある場合、その私道部分の上に建物を建てることはできない上に、その私道部分の面積は、建物を建築する際の容積率や建ぺい率の算定面積から除外する必要があります。
 私道が、「建築基準法上の道路」でない場合には、容積率等の制限を受けません。ただ、前面道路が「建築基準法上の道路」でない場合、その土地は未接道(無道路地)となり、建物を建てることができません。このケースは中古マンションの取引では、ないといっていいレベルの話ですが、土地や戸建ての取引の際には、大いに気を付けなければいけないポイントです。


「対象不動産に含まれない私道」というのは、前面道路の持分をマンションが保有せず、完全に第三者の名義である場合を指し、車の通行を禁止されたり、通行料を払えと急に言われたりするケースがあるので、説明する必要があるのです。

また、「私道」の所有権を持分割合ではなく、私道の一部分につき各々が所有権を持つという形態の場合、自分の所有権以外の「私道」部分については、この項目で説明することになります。(レアなケースなので図解は省略します。気になる方はお問合せください。)

さすがにマンションの接面道路が完全に第三者のものというケースはレアだと思いますが、古いマンションだとデベロッパーが道路(位置指定道路)の所有権を持っていたものの、その後、倒産し、他の会社に道路の所有権が移行した、という非常に面倒なケースがありえます。(そんな物件は掴まされないようにしましょう。)


これは中古マンションの取引の際には、問題となることの少ない項目ですが、電気事業者にこだわりがある人は、要チェックかもしれません。マンションの管理組合が「高圧一括受電契約」をしている場合は、電気事業者の変更をすることができません。

上下水道についても、私設管を敷設している場合には、その内容が記載されます。

「中古マンション」の取引を想定しているので省略します。

この項目でのポイントは「敷地の権利が所有権か否か」「敷地面積は分譲時と変化がないか」の2点です。

所有権か否か

一棟の建物が存する敷地に関する権利が「所有権」であれば、特に問題はありません。「借地権」や「地上権」である場合、土地の固定資産税が掛からない代わりに「地代」が必要となります。また、借地権等の契約期間が満了した場合に「建物を取り壊して更地にして返還」が必要かどうかも要確認です。
【参考】「定期借地権マンション」は嫌いですか?

敷地面積は分譲時と変化がないか

敷地の一部が都市計画道路に取られて敷地面積が減少している場合、建物が「既存不適格」となり建替えが困難になる場合があります。レアなケースですが、知らずに買うと「ババ抜きのババ物件を掴まされた!」と後悔することになります。

「共用部分の範囲」は、「別添管理規約をご参照ください。」となっていることが多いと思います。共用部分は、売買対象部分ではないのであまり興味がないという人がいますが、住民の10分の1も利用していないフィットネスクラブや、維持費が高額な噴水などがあると、維持管理に関する住民間の意見の衝突が生じることがあります。

また、「共用部分の持分割合」は通常「専有部分の床面積割合」ですが、規約の変更(議決権の4分の3の賛成が必要)により別の基準を設けることもできます。各戸平等に戸数で案分するということもできます。わざわざ規約の変更を行った場合には、その理由もヒアリングしたいものです。

管理規約や使用細則に記載されている内容のうち、トラブルになりがちな重要な部分につき、抜き出しています。「用途制限」というのは、事務所使用はNG等が定められている場合です。オートロックの内側にある専有部分が事務所や店舗として使用されていると、不特定多数の人がマンションに出入りすることになり、治安面で不安が生じます。

ペットや楽器は説明の必要がないと思いますが、「フローリングの制限」というのは、特に古いマンションで床がカーペットである部屋をフローリングにリフォームすると、下階の人から音がうるさいとクレームを受けることがあります。そのため、フローリングに変更する場合には、防音等の必要な措置を講じるよう義務付けている管理組合があります。

専用使用権というのは「共用部分等を専用として使用できる権利」です。バルコニーや玄関扉・窓枠・窓ガラス等で使用料を取られるというのは聞いたことがないですが、その下からは専用使用料を徴収されることが通常です。

ここでは、売買対象になっている専有部分に関わらず、マンション全体として「専用使用権」に該当するものが全て記載されています。書いてある通りなので、よく確認しましょう。

上の項目との違いがよく分からないと思いますが、この「対象不動産に付随する」というのは、この部屋を売買した場合に、買主にそれを使用する権利が自動的に承継されるということを意味します。

バルコニーや玄関扉・窓枠・窓ガラスの使用権が自動的に承継されないとおかしいですよね。部屋は売ったけれど、玄関扉は使えません、なんて。

専用庭やルーフバルコニーが付いている部屋とか、たまに見掛ける「駐車場の専用使用権付き」と表示のある物件などは、この項目にその付随する専用使用権を追記することになります。

竣工後間もないマンションなどで、いわゆる売れ残り住戸がある場合、それらの住戸に係る管理費等はデベロッパーが負担しなくてはならないのですが、規約で減免する旨定めておけば負担の必要はありません。

そのようなケースに当てはまる場合、ここに内容が記載されます。

将来的なマンションの価値を決めるといっても過言ではない「修繕積立金」について、簡単にまとめてあります。

計画修繕積立制度

かなり古いマンション以外「有」にチェックが入っていると思います。修繕積立金の額だけでなく、「段階増額方式」なのか、それとも「均等積立方式」なのかについても確認しましょう。
【参考】「マンションは管理を買え」というけれど、具体的なチェックポイントは?

すでに積み立てられている額

マンションは大規模修繕工事を12年~15年ほどの周期で行います。例えば、築10年もしくは築22年のマンションの購入を検討していて、この「すでに積み立てられている額」が心もとない場合、購入してすぐに修繕一時金を徴収される可能性を考えましょう(というか、その可能性をヒアリングしましょう)。

大規模修繕工事を済ませたばかりのときは、当然、この額は少なくなっています。

滞納

専有部分に滞納がある場合、購入した人がその滞納額を返済する義務を負います。というか、売主が滞納しているのなら、その分価格を下げるという話になります。

滞納が購入予定の専有部分のものじゃない、と言っても安心はできません。当該一棟の建物に係る滞納額が多額になってくると、大規模修繕工事の時期が来ても、費用が足りずに工事ができないなんてことになりかねません。必要な工事ができなければ、建物の劣化は早まり、ゴーストマンションと化す恐れもあります。

当該一棟の建物に係る滞納額は回収の見込みがあるのか、ヒアリングが必要となります。

「マンションは管理で買え」と言われるくらいなので、管理は大事です。でも、管理費が高いから「管理が良い」と比例する訳でもないのが難しいところです。

これに関しては、管理費の高い・安いよりも、管理組合で管理について議論がされているか否かを重視して頂きたいと思っています。きちんと議論した上で、高くても平均点の高いデベロッパー系列の管理会社を使おうとなっているのならOKでしょう。また、自分たちでも当番制で多少の管理を分担する代わりに管理会社にお願いする仕事を減らして管理費を削減すると決めているとしたら、それも素晴らしいと思います。

「管理」は、管理組合(区分所有者たち)がきちんとコミュニケーションをとれていることが一番重要です。古くても管理が行き届いているマンションは、まず間違いなく管理組合がしっかりしています。

滞納については、修繕積立金と同様です。一部の人が払わなくなると、必要な管理費用を残りの人で分担せざるを得ず、管理費の値上げを余儀なくされることがあります。こちらも、滞納額は回収の見込みがあるのか、ヒアリングは必須です。

上で触れたように、管理で一番大切なのは管理組合のコミュニケーションなので、基本、書いてある内容を読めば足りるのですが、「管理の形態」は重要です。

多くのマンションは「全部委託管理」になっていると思います。ほとんどの管理業務を管理会社に委託する方式です。

「一部委託管理」だと業者任せにせず、管理組合ができる部分を自分たちで行っているので、別の言い方をすると、管理組合(区分所有者)の負担が大きな管理方式です。「自主管理」は、古いマンションだとたまに見掛けますが、管理会社に管理業務を委託せず、自分たちで管理をする方式です。管理費の滞納が増えて、管理会社への業務委託費が払えなくなっての自主管理というケースもあります。

ここは修繕をした“記録”があるかどうかを記載する項目です。別の言い方をすると、“記録”がなければ、リフォームをしているだろう!と明らかに分かるようなケースでも、ここでは「無」にチェックが入ってしまいます。

なので、ここで「無」になっていても、現地調査(内見)の際にリフォームの形跡を見付けたら、しっかりとヒアリングしましょう。

「特約」と同様、こういう「その他」にわざわざ記載されている項目は、標準的なものではなく、このマンションならではの取り決めであることがあるので、要チェックです。

⇒ まだまだ先は長いので、続きは、別ページにします。