不動産売買契約書は、追加された条項等に注意!01(ひな型を見ながら解説)

気になる不動産を見付け、その不動産に大きなリスクが内在していないことを調査・確認したら、いよいよ『契約』に臨むことになります。

不動産売買における『契約』の際に、一番気を付けなければならないことは何でしょうか?

それは、「自分にとって不利な条文・項目・特約(以下、条項等)がないこと」を確認することです。

至極当たり前のことを言っていますよね。しかし、不動産売買の現場で、契約書を契約日の数日前に取り寄せて、「不利な条項等」がないかどうかチェックしている購入者はどれくらいいるのでしょう。

私のところに相談にいらっしゃる方々の多くは、もう数日後に契約だというスケジュールでも、契約書や重要事項説明書のひな型を取り寄せておらず、契約日当日にぶっつけ本番で契約書等を見る、という状況でした。

勿論、これは、このお客様の側が悪いのではなく、仲介業者が悪いのです。本来、購入の依頼を受けた業者は、購入のサポートをしなくてはいけない筈です。
※「物件購入の手伝いを頼むべき不動産仲介業者の条件5ポイント」参照。

当然、購入者にとって不利な条項等がないか、専門家としての知見・経験を活かして、契約書等を代わりにチェックするくらいのことはやっていい筈です。そして、不利な項目等を見付けたら、お客様と相談の上で売主と交渉する段取りが必要です。その調整が終わってから「契約書にサイン」ということになるのが普通ではないでしょうか。

不利な項目等がないならないで、契約書のひな型をお客様に見せた上で、「特段不利になるような条項等はありませんでした。」と安心させてあげることが大切だと思うのです。

前置きが長くなりましたが、ここでは、契約書を事前に取り寄せたとして、その契約書のどこをチェックすればいいのかについて書いていきます。

不動産売買契約書をチェックする際の注目点

「不動産売買契約書」を法律の専門家や不動産の専門家でもないのに、不利な条項等がないか見抜くというのは至難の業です。本当は信頼できる不動産の専門家を見付けることができたらいいのですが、それが簡単にできたら、このサイトをご覧になっていないですよね。

「不動産売買契約書」に自分にとって不利な条項等の記載がないか見抜くには、標準的な不動産売買契約書と比較するのが一番簡単です。なぜなら、何もない状態から必要なのに記載されていない条項等や不利なことが書いてある条項等を見抜くのはとても難しいからです。

個別の契約書を標準的な契約書と比較することで、必要なのに抜けている条項等や標準的な契約書とは文言が異なっている等の差異に気付けるのです。「間違い探し」だと思って、楽しんでやって頂くのがいいと思います。

「標準的な契約書」としては、不動産協会が用意しているものが一番使われているという意味でも、標準的なものでしょうから、それを使います。そして、ここからその「標準的な契約書」について、その条項等を説明します。個別の契約書と比較するポイントとしては、以下の3点について注目してください。

標準的な契約書にあって、個別の契約書にない条項等
個別の契約書にあって、標準的な契約書にない条項等
標準的な契約書と同じに見えて、文言が異なっている条項等

1はあまりないケースだと思いますが、あった場合は“要注意”です。標準的な契約書は、通常必要だと思うからそれらの条項等を入れているのですから、個別の契約書にその条項がないというのは、どんな理由・意図があるのかヒアリングしなくてはなりません。

2については、ほとんどの契約で存在します。個々の状況がそれぞれ異なるからです。だとしたら、何が足されて、それがどのような影響があるのかを見抜かなくてはなりません。

3については、言葉尻の差などはどうでもいいのですが、難しく分かりにくく書いてあって、意味が変わっている可能性のある場合に注意が必要です。

特に注意が必要なのは「特約」に書かれている項目です。「特約」には2に当たる項目が書かれていることが多いので、一文一文じっくりと吟味しなくてはなりません。
※以下、中古マンションの取引の際の「売買契約書」について説明します。

標準的な不動産売買契約書

ここでは、公益社団法人全日本不動産協会が用意している区分マンション向け「不動産売買契約書」を使います。
※ 戸建て、土地の場合は、必要な条項等が格段に増えますので、別途ご相談ください。

表紙(表題部)


表題部に記載されている内容は「不動産の特定」です。「あなたの買おうとしている不動産はこれで間違いないですよね?」ということです。当たり前過ぎて、こんなところよく見ないで飛ばしているよ、というあなた、例えば、ここに記載されている「建物の名称」と「部屋番号」が一致していることを確認しないと、買えない物件(他人物)についてお金を払うことになりかねませんよ。

まぁ、実際にはそんなことをしたら仲介業者が大変なことになりますから、ほとんどないことですが、地面師事件などをニュースで聞いたことがあるのであれば、この表題部もおろそかにしないで一つ一つじっくりとチェックして頂きたいと思います。

ということで、この部分で特に大切なのは、

登記記録表題部の「建物の名称」が、売買対象の部屋番号であることを確認
売主の本人確認

これらを確認するためには、自分でも登記記録を取りましょう。当該物件の家屋番号を売主(側業者)に聞き、法務局で請求します。

売主側業者から登記簿のコピーも貰えると思います。ただ、やはり契約の前に、自分で取って貰いたいと思います。なぜなら、本当の稀にですが、売主(側業者)が細工をしている場合があるためです。(そのため、買主側業者は必ず改めて取得します。)

その登記簿を見て、契約書に記載されている物件が買おうとしている物件と一致していること(登記記録表題部の建物の名称が部屋番号と一致していること)や、甲区(所有権に関する事項)に記載されている所有者の氏名と売主の氏名が一致していることを確認します。

売主の本人確認については、契約当日に、改めて運転免許証等の写真付きの身分証明書の原本を見せてもらった上で、売主の顔や名前を照合することになります。契約前の事前チェックでは、登記簿の確認をすればいいと思います。


この部分には、指値をして交渉した結果の実際の売買代金が記載されている筈です。交渉して妥結した筈なのに、また価格が戻っている、等があったらすぐにクレームを入れましょう。

その下に記載されている内容は、事前に買主側業者と相談している筈です。手付金や内金等につき、日付や金額が話していた内容と相違ないか確認します。(手付金や内金等の意味については、長くなるのでここでは触れません。)


この項目は、敷地が借地権であった場合に必要となります。この日までに譲渡の承認を地主から貰えなかったら契約解除となる、という取り決めです。

ここは「インスペクション」についての項目です。「インスペクション」は、構造耐力上主要な部分や雨漏りに関する部分の調査なので、マンションの場合は、あまり大きな意味はないことが多いです。
※これが「中古戸建て」でしたら、インスペクションは“必ず”やるべきです。

ここに書かれていることは、標準的な契約とは異なるものだと思ってもらっていいです。(重要な条項等について、強調するためにここに改めて書く場合もありますが。)
※個別にこんなものがあるというのは羅列すると長くなるので省略します。また、いつか書きます。

事前に取り寄せた場合、この「売主」の欄が空白であることがありますが、上述した通り、売主の氏名はきちんと聞いておきましょう。そして、その売主の氏名が取り寄せた登記記録の所有者の氏名と一致することを確認しましょう。

⇒ 長くなったので、契約書本文については、別ページにします。