マンションの前の道路はどんな道路がベストなのか?

少し前に「幹線道路沿いの物件を勧めない理由」を書きましたので、今回は幹線道路以外の道路について書きます。

物件の入口が面している「道路」は、土地や戸建てを購入する場合には、必ず詳しく調べます。「道路」によって、そもそも建物が建てることができなかったり、建てることはできても思うような大きさにできなかったり、私道なんかだと水道を引けなかったりといった重大なリスクが潜んでいるからです。

その点、マンションの場合は、既に建物が建っているので、前面道路を気にする方はほとんどいないと思います。そもそも建替えの難しいマンションでは、その建物があることを前提にするので、上述したようなリスクについては考えなくてもいいと思います。ただ、建物が建たないような重大なリスクはないかもしれませんが、毎日使うことを考えると無視できないリスクは存在します。

マンションは「住む」場所だからこそ、道路にどんな種類があり、どんなリスクがあるのか、安全安心(交通事故の危険性及び犯罪に遭遇する危険性)の観点から見ていきましょう。

道路のリスク

不動産に関わる「道路」で重要なのは「建築基準法上の道路」ですが、ここでは用途などから分類しつつ、道路について分析します。

(1)前面道路の種類(幹線道路、生活道路、私道等)
(2)前面道路の幅員
(3)前面道路の車の通行量
(4)歩道の整備等
(5)駅から物件までの道路環境、街灯の明るさ

≪「建築基準法上の道路」とは、どのような道路か?≫
「建築基準法上の道路」というのは、建物を建築する際に必要とされる道路の要件です。建築基準法上の道路に接していない敷地には、原則として建物を建てることができません。具体的には、建物を建てようとする敷地は、原則4m以上の幅員の道路に2m以上面していなければなりません。ただ、幅員4m未満の道でも建築基準法上の道路とみなされる場合もあるので、詳しくは役所でヒアリングするか、専門家に聞いてください。

前面道路の種類(幹線道路、生活道路、私道等)

道路の種類というと、法律上の分類や管理上の分類等色々ありますが、ここではもっと感覚的に、車の通行量や住民の使用頻度で分類したいと思います。

道路の中で一番広くて車の通行量も多いのは、「幹線道路」です。幹線道路の影響については別のページで触れているので、省略します。

幹線道路ほどではないけれども、それなりに車の通行量があるという道路もあります。この場合、幹線道路が物件に及ぼす影響に近い場合があります。

マンションというのは、「住居」です。住むところであり、夜、静かに安心して眠りたい場所です。その意味では、マンションの前面道路にふさわしいのは「生活道路」だと思います。車の通行に支障があるような狭い道路では、別の不便があるので、道路幅員(道路の幅の広さ)もそこそこ欲しいところです。

つまり、道路幅員が5m~8mで、そのエリアに住んでいる人しか通行しないような静かな生活道路がベストです。

ただ、マンションの敷地が少し奥こまった場所にある場合などで、前面道路が「私道」である場合には注意が必要です。その道路の所有・管理もマンションの管理組合である場合、道路の管理・修繕の費用が、マンションの管理費・修繕積立金に上乗せされる場合があります。つまり、他のマンションより、管理費や修繕積立金が将来的に高くなる可能性があるということです。

前面道路の幅員

前でも少し触れてしまいましたが、前面道路の幅員(道路の幅の広さ)は、広ければ広い方がいい、という訳ではありません。

広い方が、建物を建築する際の制約は少なくなるのですが、系統・連続性の良い広い道路は、どうしても車の通行量が増えます。また、たまに、住宅街になぜか数百mだけ広い道路が存在することがありますが、あれはあれでリスクを感じます。両端が切れているので、車の通行量は少ないですが、知らない車が駐車していてもあまり気にならないことが多いためです。連れ去り等の犯罪の多くが、車を使用していることを考えると、車が駐車しやすい道路というのも考えものです。

また、狭すぎる道路もリスクがあります。一般的に、車がすれ違ったり、緊急車両(救急車や消防車)が通行するのに必要な道路幅員は、最低4mだといわれます。狭い道路が続く路地の奥にある物件の場合、救急車が到着するのに時間が掛かったり、ポンプ車が近くまでこれず、火を消すのに時間が掛かったりするリスクが生じます。

以上から、先にも触れましたが、道路幅員は5m~8mほどがいいのではないかと思っています。10mあったらダメなのか?と言われましたら、全然そんなことはなく、車の通行量、歩道の整備の状態、駐車のしづらさ等を個別に判断することになります。大切なのは、幅員ではなくリスクの少なさです。5m~8mというのは、あくまで生活道路でこれくらいの幅員の道路はいい道路が多かった、というだけの意味です。

前面道路の車の通行量

これも先に触れましたが、車の通行量は非常に重要です。車は、騒音や振動等の原因になるだけでなく、人間(特に子供)にとっては凶器ともなる存在だからです。

エントランス前の道路の車の通行量は、少ないに越したことはありません。騒音等の問題もさることながら、子供というのは、どんなに注意をしていても、必ず飛び出しをやらかすからです。子供から目を離さないようにするのは前提ながら、万が一飛び出してしまっても、車にひかれるリスクが小さい道路をできるなら選びたいものです。特にファミリー層には注意していただきたいポイントです。

歩道の整備等

生活道路の場合は必要ありませんが、少し広い、車も多少走っているような道路ですと、「歩道」がきちんと整備されていることが重要です。

特に、子供が飛び出してしまっても車道には出れないように、エントランス前にはガードレールがあるといいですね。昔、国土交通省の役人さんが話していたことがあるのですが、交通事故が減る一番の施策はガードレールの設置だそうです。少し広い道路で、車の通行量もある道路なら、ガードレースがしっかり守ってくれているか、要チェックです。

駅から物件までの道路環境、街灯の明るさ

ここまでは、物件の前の道路の話をしてきましたが、毎日使う駅から物件までの経路に危険な個所がないかも調べておくべきです。この場合の視点も、安全安心(交通事故の危険性及び犯罪に遭遇する危険性)です。

駅から物件までの経路に、ガードレールがないのに車の通行量の多い道路(抜け道に使われている道路に多い)がないか、安全に渡れる交差点が遠く信号のない横断歩道を渡らなければならない箇所がないか等をチェックします。車の運転者がうっかり事故を起こしても、こちらが気を付けている限り、大きな被害には遭わないような道路を通りたいものです。

また、細く曲がりくねって先が見通せない道路や、知らない車が駐車している道路、街路灯が少なく夜になると暗い道路なども、セキュリティ(犯罪に遭遇する危険性)の観点から避けた方がいいでしょう。

結論

土地や戸建ての場合の道路と異なり、マンションの場合、「道路」で価格が変わるのは幹線道路沿いや狭い路地の場合等であり、前面道路幅員が8mである物件と5mである物件とで、他の条件が一緒なら(基準容積率も変わらなければ)価格が変わることはほとんどありません。

価格に与える影響は軽微でも、たかが「道路」されど「道路」です。是非、交通事故の危険性及び犯罪に遭遇する危険性の観点からリスクを抜き出し、安全安心な道路・物件を選んでいただきたいと願っております。