『崖上マンション』は、平地に建つ物件よりも「価格が安くなくてはならない」のですが、なぜでしょうか。
まず、“崖上”とはどういう立地なのか。
マンションの敷地に高低差があり、敷地の片方が崖になっている場所です。崖部分には、擁壁があることがほとんどです。
擁壁によって土台が支えられている土地に建っているマンションが『崖上マンション』です。
その“崖上”であることのリスクは、
1.耐震性の懸念
2.修繕費用がかさむことの懸念
以上の、主に2つに分けられます。
1.耐震性の懸念
この「耐震性」のチェックポイントは2つです。
(1)盛土かどうか
(2)擁壁の耐用年数
(1)盛土
東日本大震災でも、熊本地震でも、以前の大地震でも、盛土の土地は大きな被害が出ました。
※切土であれば、盛土に比べれば安全だと思います。
擁壁によって支えられている土地が「盛土」かどうかは非常に重要です。宅地造成工事規制区域内(盛土や切土が必要な土地は、この区域に指定されていることが多いです。)で1m超の擁壁が建設されている土地(切土なら2m超等)は、開発許可が必要になるので、区役所の建築課で、開発登録簿を閲覧できます。
敷地が盛土であったなら、地震の際に建物が損壊するリスクは、平地と比較すると大幅に大きくなります。
地盤改良や擁壁をきちんと施工することで、リスクは小さくできるという話もありますが、東日本大震災や熊本地震で一番思い知らされたのが「人間の“想定”なんて自然は簡単に超えてくる」ということだった筈です。
“想定”を必要としない土地を選んだ方がいいと思います。
(2)擁壁の耐用年数
国土交通省国土技術政策総合研究所が行った「既存造成地擁壁の耐久性に関する実態調査」によると、築後20年経った擁壁は目視による劣化調査を実施することが望ましいとのことです。
要は、擁壁の多くは、20年くらい経つと修繕が必要になる可能性が高いということです。
また、大きな地震があった場合(例えば東日本大震災)も、擁壁の目視による確認は必須だと思います。
東日本大震災の後、ヒビが入っていたり、ゆがみが出ていたりする擁壁を新宿区でも見ました。大きな揺れに見舞われると、擁壁の耐用年数は一気に縮みます。
※ 写真の場所は東日本大震災とは無関係です。
2.修繕費用がかさむことの懸念
そして、擁壁に修繕が必要と認められた場合、修繕費用が掛かります。
『崖上マンション』の場合、建物の修繕費用の他に、擁壁の修繕費用も見込まないといけないのです。
なので、「修繕積立金」は、平地に建つマンションよりも高くないといけません。
もし、現時点で安い「修繕積立金」である場合、将来、修繕一時金等を取られるだけではなく、大幅な値上げがあることを覚悟しなくてはなりません。
以上の通り、『崖上マンション』は、大地震時のリスクが大きく、ランニングコストも高くなることを覚悟しなくてはなりません。
これらのリスク等の分、高台の平地に建つマンションより、相応に安い価格になってくれないと手を出すべきではないと思います。