不動産売買契約書は、追加された条項等に注意!03(ひな型を見ながら解説)

前の記事で中古区分マンションの取引に係る不動産売買契約書の「本文(前半)」を簡単に解説しました。
今回は、契約書本文の後半について見ていきますが、引き続き「標準的な契約書」と「個別の契約書」と比較するポイントとしては、以下の3点について注目してください。

標準的な契約書にあって、個別の契約書にない条項等
個別の契約書にあって、標準的な契約書にない条項等
標準的な契約書と同じに見えて、文言が異なっている条項等

これらの“間違い探し”をしながら契約書をチェックしましょう。

不動産売買契約書(本文の後編)

【解説】
 こちらは「設備」についての引渡しについて規定しています。設備とは、システムキッチンやユニットバス、給湯器等を指します。第2項では、第12条でも触れた小さな不具合と同様に、設備の不具合では「契約解除」はできませんよ、と謳っています。不動産は金額の大きな取引ですから、あまり簡単に契約解除を認めてしまうのも、法的安定性を欠くということです。

なので、事前のチェックは重要となります。売主が居住中で契約前にあまり詳細に確認できなかった場合には、契約書に特約を追加して設備に不具合があった場合の取扱いについて決めておくという手もあります。

[少し横に逸れた話]
築10年前後、またはそれより古い物件の場合、設備の更新についても確認しなくてはいけません。例えば、給湯器の寿命は大体12~15年くらいといわれており、築15年くらいの物件を買った場合、給湯器が一度も更新されていない状態だと入居後すぐに壊れるということがあり得ます。冬とかだったら新しい給湯器の設置が済むまでしばらくシャワーにも入れない、なんて悲惨なことになりかねません。なので、更新されていなかったら、給湯器の更新代相当の値下げ交渉をするのがいいでしょう。

【解説】《ここ重要!》
 買主が、もっと良いと思える物件を見付けてしまった、若しくは家庭の事情等で買えなくなったなどなど、買主の都合で購入を取り下げたい場合、手付金を放棄すれば契約解除となります。それ以上の費用を請求されることはありません。というように、契約解除をした場合、手付金を超える支払いを求めないということが明記されていることが必要です。手付金に加え違約金として、等の文言が別にある場合は注意が必要です。

また「相手方の本契約の履行の着手の有無にかかわらず」という部分も重要です。上述のようにこの部分にかかわらず期限までは手付金の放棄で契約解除ができると記載されているならいいのですが、「相手方の履行の着手」があった場合には違約金が必要となっている場合もあります。
※「履行の着手」については長くなるので省略します。興味のある方は調べてください。読んでみると、そんなに難しいことではないです。

この「手付解除」の部分も、トラブルになりがちな条項なので、どのような条件で契約解除できるのかを把握し、万が一、こちらから契約解除をする可能性があるのであれば、なるべく有利な取り決めになるように交渉しましょう。

【解説】
 この契約書でいえば、手付解除の期限を過ぎて、かつ「相手方の履行の着手」があったにも関わらず、契約解除を求めた場合や、買主が残代金を支払ったにもかかわらずマンションの部屋の引渡しをしない(売主の家具等の荷物を撤去しない)等の場合に違約金を定めて、履行を促すものです。

【解説】
 いわゆる「反社条項」です。万が一、契約の相手方が、反社会的勢力と関わりがあると判明した場合に、直ちに“無催告で”契約解除できる、ということを定めたものです。反社会的勢力とのトラブルに巻き込まれることを防ぐための条文なので、少し長ったらしく同じようなことを繰り返しているような感もありますが、存在自体に意味があると思ってください。

【解説】《ここ重要!》
 いわゆる「ローン条項」です。住宅ローンを組んでマンションを購入する場合、この条項はとても重要です。住宅ローンの本申込みには、この契約書が必要なので「本契約締結後すみやかにその融資の申込み手続をします」と規定しているのですが、この「すみやかに」という部分は、買主側の努力義務を表していると取れます。

つまり、この条項がある場合、売主の法的立場は不安定な状態が継続する訳です。売買契約は済んだものの、買主の住宅ローン審査が通らなかったら、また一から売却活動をやり直さないといけないのですから。なので、買主は「すみやかに」融資の申込み手続きをする必要があります。

また、第2項の「融資の全部または一部」の“一部”も重要な部分です。例えば、5,000万円のローンを申込んで4,200万円しか融資してもらえなかった場合、この“一部”の文言がなければ「あと800万円は買主自身で用意してください」と言われてしまうなんてリスクも生じます。この場合、何とか800万円用意できても、生活プランは狂っちゃいますよね。

第3項も、ほとんどの契約書にあると思いますが、「無利息で返還」「損賠賠償請求は不可」という2点は書かれていることを確認しましょう。

第4項は、買主の気が変わり、当該物件の購入意欲がなくなった場合に、そのまま契約解除を申し入れると手付金の没収や違約金を徴収されるのに対し、住宅ローンが下りなかったという理由なら、手付金も戻りますし違約金の必要もありません。なので、住宅ローンの手続きを怠ったりして金融機関の審査でNO判定を貰おうとする場合があることを牽制するために新たに設けられた条項です。

これを見抜くのは難しいですが、ローン条項に合意する以上、買主にはローンの成立のために通常必要となる努力をする義務があると解されるでしょう。わざとローン審査で弾いてもらおうなんてことはしないようにしましょう。

【解説】
 これは敷地権が「借地権」だった場合の条文です。ローン条項とは逆で、売主が「承諾書」を取得できなければ、契約解除となる取り決めです。

【解説】
 インスペクションのことです。インスペクションが済んでいる場合には、その調査報告書を交付してもらいましょう。表紙(表題部)の「インスペクション」の項目でも触れましたが、マンションの場合はインスペクションはあまり大きな意味を持ちません。勿論、実施されることにマイナスはありません。

【解説】
 多く見られるのは、買主側の契約書に印紙を貼り(印紙代買主負担)、それのコピーを売主に渡すというパターンです。売主は、売ってしまった物件の契約書は保管する以外に使い道はありませんので、コピーで充分という訳です。これなら売主は印紙代の負担はありません。その場合、この条文は「本契約書1通を作成し、買主がこれを保有し、売主はこの写しを保有する」等の文言に変わります。

【解説】
 この条文も、至極当たり前のことが書かれており、特にリスクが生じる点はありません。ただ、管理規約等のマンション内のルールに関しては、契約日の数日前にコピーは貰っておかなくてはなりません。そのマンションに住むとどんなルールに縛られるのかを知らないまま、購入の判断なんて普通できないですよね。

【解説】
 よくあるのは夫婦の共有となっている物件です。「連帯債務」と明記するのは重要です。また「通知は、複数のうちの一人に到達したときに、その全員に対し効力を生じます」という文言も重要です。代表者だと思われる方に通知をしたのに、他の人から「聞いてないから無効だ!」なんて主張されたらややこしくなるので。

【解説】
 売買トラブルが裁判にまで発展した場合の取り決めです。

【解説】
 これも契約書によく書かれている決まり文句です。当たり前のことじゃないか、とお思いでしょうが、何かトラブルが起きた際に、いきなり「裁判だ!」とかってなるのではなく、まずは誠意をもって協議しましょう、ということです。

以上です。

こうやって実際に通して読んでみると、そんなに難しいことは書かれていないですよね。でも、これを契約当日にいきなり目の前に出されて「問題なければ押印をお願いします。」と言われて、「問題あります!」と拒否できる人は少ないと思います。

なので、繰り返しなのですが、契約日の数日前に契約書のひな型を取り寄せ、内容をチェックするとともに、不利なのではないかと思える部分を見付けたら、業者に相談して売主と交渉してもらいましょう。

この「契約サポート機能」も不動産業者の当たり前の業務なので、仲介手数料を買主から取るのであれば、完全に買主の味方として動いてもらいましょう。

次から「重要事項説明書」を解説します。