不動産の資産性を高めたいなら、交通利便性を最も重視すべき

2.資産性編

前回まで“安心安全”につき書いてきましたが、今回からは『資産性』について話をします。
マンション購入検討理由の中で、「資産を持ちたい・資産として有利だと思ったから」が一番多い理由となっています。

第31回 新築分譲マンション購入に際しての意識調査 2019年
https://www.major7.net/contents/trendlabo/research/vol031/

『不動産の資産性』というのは、価格が上がる可能性が高い、もしくは価値を維持できる可能性が高い、という意味ですよね。価格が上がる可能性は、景気に左右されるところが大きいので、基本的には「価値を維持できる可能性が高い」という意味を中心にします。

では、“資産性”のある不動産にはどのような要素が必要でしょうか。

(1) 利便性
A.交通利便性
B. 生活利便性
(2) 地盤や建物の堅牢性(安心安全と同じ)
(3) 流動性
等の要素があると思います。

今回は、利便性に焦点を当てます。

(1) 利便性


利便性は建物等は関係なく、その物件が所在するエリアの話となります。「便利な場所」という意味です。

A.交通利便性

家探しをしている方ならご承知のことだと思いますが、都心部の便利なエリアほど価格が高くなります。
#その上にブランドエリア等もありますが。

これは、職住接近を求める方にとっては当然のことです。満員電車での通勤時間なんて、無駄に思える人が多いでしょう。
多くの方が東京都心部にお勤めなので、東京都心部に住みたいというニーズも変わることはないでしょう。

「住みたい」、つまり住む人の数、『人口』が不動産の長期的な価値を決める一番の要素です。
人が多くなると不動産価格が上がり、人が少なくなると不動産価格は下がる。すごく単純ですが、不動産価格を長期的に決定付ける一番の要因といっていいのではないでしょうか。
駅ができると不動産価格は上がりますが、それは利便性が上がって、住民が増えたり、来街者が増えたりするから、というのをイメージすると分かりやすいかもしれません。

では、東京都心部の人口の推移を見てみましょう。

※ 住民基本台帳。長期の連続的な趨勢を見るため「日本人」の人口を採用。

バブルの頃、不動産価格が上昇し過ぎて「ドーナツ化現象」が生じ、都心の人口は減少しました。
ただ、都心部は、不動産の価格さえ手が届く範囲にあれば、多くの人が住みたいと思っている場所なので、バブル崩壊により不動産価格が下がると、人口が戻ってきました。
人口が戻るに従い、長期的な趨勢として、不動産価格も上昇しています。

別の言い方をすれば、「多くの人が住みたいと思っている場所は、景気循環等により一時的に価格の下落が見られても、しばらくすると価格が戻る(上昇する)可能性が高い」ということになります。

また、これは東京都心部に限られますが、都心部の不動産は、グローバルなマーケットに組み込まれているので、ある程度価格が下がると、裁定狙いの海外の投資資金が流入してくる可能性が高いです。これも、バブル崩壊のときやこの十年ほどの間に見られた現象です。
裁定というのは、価格が行き過ぎた場合に、そのギャップで儲けようとする取引のことです。通常は金融や投資の分野で使われる手法ですが、不動産価格も安過ぎと判断されると世界中から投資資金が流入する可能性が高くなります。

不動産の場合は、高過ぎると判断されても、空売りがないので価格調整機能としては不完全で、またサイクルは他の投資商品と比較すると長期になりがちであることも考慮しないといけないのですが、東京都心部のようにグローバルな投資対象になっている場所の不動産は、価格が下がり続けるということは考えにくいです。

“資産性”を気にするのであれば、人が集まる要素となる『交通利便性』は、一番に重視しないといけない要素です。

B. 生活利便性

生活利便性は、住民が増えれば、後から備わってくるものでもあります。
新宿区の曙橋でも、15年ほど前にフジテレビ跡地に「三徳 河田店」ができるまで、駅前の小さな「三徳 住吉店」しかなく、四谷三丁目の「丸正」や「セイフー(現在閉店)」まで行く人も多かったのですが、今や「ライフ」が若松河田駅にでき、富久町に「イトーヨーカドー食品館」もできました。
保育園もすごく増えましたし、住民が増えると、生活に必要なものは事業者が出店してくれるものでもあります。
※必ずしも自宅の近くに出店してくれる訳ではありませんが。

『生活利便性』は、居住快適性や売却を考えた際の物件チラシのコピーとしては有用ですが、“資産性”という意味においては『交通利便性』の方が重要です。

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「不動産鑑定士」として相談を受けているうちに、物件購入を検討する多くの方が主客転倒(※)のアプローチをとっているのではないかなと疑問に思うことが多く、物件購入を検討する前に知っておいていただきたい不動産の基本についてお話ししたいと思っています。
現在「マーケットに出ている物件」を前提に考えるのではなく、そもそもどんな不動産がリスクも少なく、資産性も保たれる可能性が高いのかを考えていただきたいと思っています。