不動産の資産性は、建物の堅牢性に左右される

2.資産性編

前回“資産性(利便性)”につき触れましたが、今回は「建物の堅牢性」についてです。

(2) 建物の堅牢性


「どのような建物がいいのか」については、以前の記事、
1.住まい基本(安心安全)編 > (1) 安心安全(大地震想定編) > B.建物
をご覧ください。“耐震性”の観点から、選ぶべき建物について書いています。

要は、大地震の際に倒壊や損傷の可能性が低い建物だと“資産性も保たれる”ということを指摘してきました。

今回は、建物の物理的な面そのものではなく、大地震の際に建物が損壊することで生じる問題を取り上げることで、堅牢性の高い(損壊可能性の低い)建物を選んだ方がいいのだということを述べます。

マンションの一番の課題は、『建替えが難しい』ことです。
大地震が発生し、倒壊や大きな損傷が生じると、マンションの建替えが必要となる場合があります。建替えをするのには、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成が必要です。

入居者の高齢化が進んでいたり、投資用で部屋を購入しているオーナーの比率が高いマンションは建替えが難しいことが多いと言われています。
例えば高齢化が進んだマンションだと、もう先が長くないからお金をかけて建て直してもしょうがないという声が挙がったり、そもそもその資金がない等の問題で賛同を得ることが難しい場合があります。また、投資用として購入したオーナーが多い場合には、投下資金回収のスパンにズレが生じて、古いマンションを安い価格で買って、短期で投下資金を回収しようと思っているオーナーは、追加で資金が必要となる建て替えには反対することが多々あります。

また、建替えまで必要なく、『大規模修繕』をしようにも区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成が必要です。
普段からコミュニケーションが取れている居住者ばかりでしたら問題ないのでしょうが、隣に誰が住んでいるのかも分からないという状態ですと、合意できるか不安が残ります。

マンションは、敷地や廊下もですが、バルコニーや窓、玄関ドア等も共用部なので、買ったからといって好き勝手には変更できません。完全な所有権ではなくて、『専有面積割合による所有権の共有』となっています。

マンションが被災した場合は、自分一人の判断ではどうしようもないので、倒壊・損傷の可能性の低い建物を選んだ方が無難でしょう。
損傷しているのに、修繕の合意さえ取れないマンションの資産性など“推して知るべし”です。

(3) 流動性

『流動性』とは、簡単に言うと、売りたいときに売れるかということです。売りたいときに売れないマンションに「資産性」などありません。「資産性」があるから売れるのですが、売れないことで「資産性」がないことが分かる、ともいえます。このように、「資産性」と「流動性」は密接な関係にあります。

つまり、「資産性」が高いマンションを買いたいのであれば、いつでも売ることができる、言い換えれば、需要が途切れることのないマンションを買うべきだということになります。

A.流動性を高める要因

利便性
これも、前回書いた資産性(交通利便性・生活利便性)の内容と同じです。
交通利便性の高いエリアであることが、「流動性」を高める一番の要因です。

ブランド
立地も建物も、「ブランド」がある方が流動性は高いと言えます。ブランドものは、その価値があるかどうかはさておき、少々割高でも「流動性」は高くなるといっていいと思います。
建物(分譲時のデベロッパー)のブランドに関しては、築年数の古いマンションは、あまり関係ないと思いますが、築浅のマンションでは影響を感じます。耐震偽装や杭打ち偽装などの事件があり、大手は建替え等の対応ができるのに対し、中小は倒産してしまうということから“ブランド信仰”が顕在化したと思っています。

位置・階層
位置とは、建物の1フロア(3階なら3階という1つの階)のどの位置に部屋があるか、です。流動性が高いのは、やはり「南向き」や「角部屋」です。
階層とは、何階の部屋か、ということです。『安心安全(防犯編)』では安全面から触れましたが、3階以上の部屋の方が流動性も高い傾向があります。

間取り
ワイドスパンは人気があります。特に、全ての部屋に、外に面した窓やバルコニーがある間取りは人気です。人気がある間取りは、流動性も高いです。
逆に、行灯部屋(窓のない部屋)や壁の一部が斜めになっている間取りの部屋は、一部の人に敬遠されます。

管理
マンションは管理で買え」という言葉がありますが、管理のしっかりしたマンションは、買う側が安心できるので「流動性」は高くなります。
管理組合議事録等は、買付証明書を出さないと見せてもらえないことがほとんどだと思いますが、サインをする前には絶対に確認しましょう。

B.流動性を低める要因

基本的には、Aの逆なので、Aで触れた要因については省きます。

敷地の権利が借地権
基本的に建物が存続する期間、その建物の一部に住むという形態であるマンションでは、敷地の権利が「借地権」でも問題がないように思えますが、買う側のローンが通りにくいので、流動性が低くなります。
築古
築古のマンションは、やはり買う側のローンに制約が生じる可能性があり、その分、流動性も低くなります。
周辺環境等
「お墓が見える」「学校のすぐ近く」「幹線道路沿い」等の環境面の要因に関しては、自分は気にならなくてもマーケットが多少なりとも限定される可能性があるので、流動性にも影響があります。

(4) 資産性のまとめ

『資産性』というのは、価格が上がる可能性が高い、もしくは価値を維持できる可能性が高いということだと、この「資産性編」の初めに書きましたが、その価値は売却しなければ顕在化しません。
別の言い方をすれば、「いつでも換金できる(流動性の高い)」可能性が高いことが『資産性』の高いマンションいうことになります。

マンションは、先にも触れたように基本的に他の居住者との共有物であり、建替えが困難である等の理由により、「終の棲家」とするには向かないと考えています。
そのような点においても、常に売却を視野に入れた『資産性』につき定期的に把握することをお勧めします。

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「不動産鑑定士」として相談を受けているうちに、物件購入を検討する多くの方が主客転倒(※)のアプローチをとっているのではないかなと疑問に思うことが多く、物件購入を検討する前に知っておいていただきたい不動産の基本についてお話ししたいと思っています。
(※)現在「マーケットに出ている物件」を前提に考えるのではなく、そもそもどんな不動産がリスクも少なく、資産性も保たれる可能性が高いのかを考えていただきたいと思っています。