想定外の大水害でも浸水しない立地の選び方

1.住まい基本(安心安全)編

(2) 安心安全(大水害想定編)


今回は、「水害」に焦点を当てたいと思います。
近年、日本のどこかで、毎年のように“想定外”の水害に見舞われています。その中で一番驚いたのが2018年の『西日本豪雨』です。台風でもないのに、あれほどの被害が出てしまうとは、、、と絶句しました。2019年の台風15号、19号の被害も考えが及ばないものでした。
もうこのような“想定外”の水害は、いつどこで起きてもおかしくないと認識しないといけないのだと思います。

では、不動産の専門家としての立場から『大水害でも浸水しない可能性の高い住居』というものを考えてみたいと思います。

水害の場合の要素は、主に『土地』です。
建物も上の方の階に住めば、例え浸水が想定を超える7~8mあったとしても自分の部屋に影響はないのでは?と言う方がいるのですが、確かに、その大雨の際に部屋にいる場合はその通りです。しかし、浸水が起きている間に建物の出入りができないということのみならず、機械室が一階や地下にあれば使えなくなり、生活に影響が出ますし、浸水した部分は水が引いた後カビが発生することが多いので、修繕費用もかさみます。
結局、水害を想定した場合、浸水しない『土地』を選ぶことが何よりも重要です。

(a) 地形的な面

まずは、土地のある場所の地形に注目します。

[高台] 坂の上の高台。坂を上ってすぐの場所ではなく、高台の平坦地が良い。
[低地・谷地・窪地(以下、低地等)] 台地のへりの下部分や、台地上にあっても昔川が流れていたり水たまりがあった土地。坂の下にある土地で、水が出ることが多い。
[崖地] 擁壁(盛土)で整地した土地や、その擁壁を後背地に抱える土地。

以上の地形では、[高台] が良いです。[高台] しかないです。
[低地等] では、浸水可能性があり、想定外の大雨の場合、建物の前の道路が川のようになるところもあると思います。
[崖地] は、浸水可能性というよりも、万が一、擁壁が崩壊した場合の被害が非常に大きくなるので避けた方がいいと思います。“想定外の災害”が毎年起きている昨今、万が一でも起きうるリスクは避けるのが無難だと思っています。

地理院地図 / GSI Maps|国土地理院
地形図、写真、標高、地形分類、災害情報など、日本の国土の様子を発信するウェブ地図です。地形図や写真の3D表示も可能。

[国土地理院地図] → [左上の「地図」をクリック] → [土地の成り立ち・土地利用] → [土地条件図] → [数値地図25000(土地条件)] で、オレンジ色の部分が「高台(台地の上)」です。

(b) 浸水リスク検索サービス

ただ、まれに「高台」なのに、内水氾濫の浸水深が大きな数値になっている場所があります。

内水氾濫(ないすいはんらん)
大雨の際に下水管の容量を超えて雨水が流れ込み溢れることで発生する氾濫。一般的に都市の排水能力は、1時間当たり降雨量50㎜相当とされているので、ゲリラ豪雨や大型台風による内水氾濫の可能性は、近年高まっているといっていいと思います。

このようなリスクがないか、確認するのに最適なサイトは、東京都建設局が公開している「浸水リスク検索サービスです。

浸水リスク検索サービス
浸水リスク検索サービス

この地図は、非常に鮮明で、かつ建物ごとにどれくらいの浸水可能性があるのか示してくれています。現在、浸水リスクを調べるには最適なサイトとなっています。

ただ、大きな河川(荒川や多摩川等)の浸水リスクは表示されない等の注意点もあります。注意点等もまとめた記事を参考までに掲載します。

『⇒「浸水リスク検索サービス」は画期的!最高!』
連日、「線状降水帯が発生した」「大雨特別警報が発表された」「危険水位を超えた」等と大雨が西日本でニュースになっています。被害に遭われた方々には、心よりお見舞い…

以上より、内水氾濫リスクは確認する必要があるものの、不動産の安心安全を水害の面から考えると、何より『高台』の上にある物件を選ぶことが大切であると断言できます。


「不動産鑑定士」として相談を受けているうちに、物件購入を検討する多くの方が主客転倒(※)のアプローチをとっているのではないかなと疑問に思うことが多く、物件購入を検討する前に知っておいていただきたい不動産の基本についてお話ししたいと思っています。
現在「マーケットに出ている物件」を前提に考えるのではなく、そもそもどんな不動産がリスクも少なく、資産性も保たれる可能性が高いのかを考えていただきたいと思っています。