適切な賃料が求められなければ収益性は判断できない

収益シミュレーション編

(1) 賃料の査定

収益不動産の評価において、一番といっていいくらい大切なのが『賃料の査定』です。
そもそも収益不動産というものは、賃料収入を前提としているので当たり前なのですが、『賃料の査定』を軽んじている方もよくお見掛けします。

物件案内チラシ等に、「利回り 〇%」と出ていますが、あれは想定のものです。
[想定1] 満室である。(空室がない)
[想定2] 想定賃料(高く見積もった賃料)である。例えば、その部屋の賃料相場が10万円~11万円だとしたら、11万円と想定して計算されている。(空室部分だけでなく、現況賃料を貰っている部屋も、その現況賃料ではなく、想定賃料で計算されている資料を見たことがあります。)
[想定3] 粗利回りである。空室率、固定資産税、管理費、修繕費等の経費が含まれていない。
[想定4] その上で、現時点のものである。建物が古くなることによる賃料下落等は想定されない。
等のいくつもの想定が前提ではじき出されている「利回り」です。
あれを鵜呑みにすることは、大きなリスクがあると言わざるを得ません。

自分でできる賃料の査定方法

では、『賃料の査定』はどのようにしたらいいのでしょうか。
賃料の査定方法で一番簡単なのは、ポータルサイトで調べることです。
ポータルサイトで「賃料相場」を調べる。
ポータルサイトで「賃料相場」を公開しているページがあります。
HOME’S 家賃相場
CHINTAI 家賃相場
アパマンショップ 家賃相場
これらの「賃料相場」で示されているのは、
[注意ポイント1] 平均値であること(面積や間取り等の個別要因は反映されていないこと)。
[注意ポイント2] あくまで現時点でマーケットに出ている物件を集計したものであること。
1は当たり前だと思われると思いますが、2が特に重要です。現時点で高額の物件が多くマーケットに出ていると相場が高く表示されます。なので、相場はあくまで参考程度にしておきます。
この公開されている「家賃相場」は、駅間比較等には有効な数字だと思いますが、上記の、特に2の影響で、ときたま、こっちの駅の方が高いなんて有り得ない!という現象が見られたりします。

ポータルサイトで条件を指定し、購入候補の物件と条件が近い物件の「賃料」を調べる。
大体の相場が分かったら、購入候補になっている物件と同じような条件を入力して検索します。
「駅徒歩時間」「面積」「築年数」等で絞り込み、候補物件と似たような物件が公開されていれば、その賃料は大いに参考になります。
[注意ポイント1] 募集賃料であること。(条件交渉のテーブルに乗る前の賃料である。)
[注意ポイント2] 「バス・トイレ別」「角部屋」「階層(何階の部屋か)」等の条件でも賃料は変わるので、候補物件との違いにも注意すること。

「レントロール」を貰う。
購入候補物件がオーナーチェンジの場合、買付証明書を出した後に、必ず「レントロール(当該物件の賃貸借契約状況一覧)」を貰いましょう。買付証明書を出さなくてもレントロールをくれる業者は、購入者に寄り添った会社だと評価できます。
オーナーチェンジ物件を購入するなら、「レントロール」は必須です。階層や位置(角部屋等)以外の要因で、賃料が安かったり高かったりする部屋があったら、その理由を業者に聞きましょう。「相場が安い時に入居して、値上げに抵抗されている。」等の返答があればOKです。
そのレントロールに記載されている現況賃料(支払賃料)等の条件を相場のものと比較することで、将来性があるか(賃料の値上げも視野に入れられるか)等の判断ができます。

専門家から入手

当該物件の「賃貸履歴」
小規模な物件の場合、無いことがほとんどですが、あれば当該物件の「賃貸履歴」を貰います。景気に応じた相場の波にどれくらい影響されるかが分かります。また、建物が古くなるに従って、賃料が下落しているかどうかの把握も大切なことです。
当該物件に近い条件に合致した直近1年等の「賃貸相場」
ポータルサイトの場合、上述の通り“現時点”かつ“平均”の情報になってしまいますが、業者は“過去5年くらい”かつ“当該物件に類似した物件”の相場情報を持っていることが多いです。相場がそんなに大きく動いているときでなければ、類似物件の募集賃料をできるだけ多く集めて参考にしたいものです。

既存の収益物件の収益性を判断する場合、一番ベースとするのが「レントロール」です。その現況が相場とズレがあるのかないのかを判断するために相場を調査する必要があります。
新築の場合は、「レントロール」がないので、新築等の同条件の類似物件の相場賃料を採用することになります。新築物件は、基本的には新築プレミアムで少し割高に貸せる可能性が高いですが、一度にマーケットに同じような部屋が普段より多く供給されることでもあるので、新築プレミアムを乗せづらい場合があることに注意が必要です。