賃料の下落率はどれくらい見込むべきか?

収益シミュレーション編

(2) 賃料の下落率の査定

前回、『賃料の査定』について記しましたが、その賃料は、あくまで“現時点”でのものです。
そもそも『賃料』というものは、マーケットが一定であれば、下落していくのが普通です。保有不動産が古くなれば、新しく建てられた競合不動産と比較される中で、賃料を下げないと部屋が埋まらなくなってきます。では、どれくらいの“下落率”を見込んだらいいのでしょうか。

自分でできる賃料の下落率の査定方法

賃料の下落率の査定方法でも一番簡単なのは、ポータルサイトで調べることです。
ポータルサイトで条件を指定し、購入候補の物件と条件が近い物件の「賃料」を調べる。
前回の『賃料の査定』と同様に、購入候補になっている物件と同じような条件を入力して検索します。
「駅徒歩時間」「面積」「築年数」等で絞り込み、候補物件と似たような物件の賃料を抜き出します。
その上で、「築年数」だけを変化させて、募集賃料の変化を見ます。(「築年数」以外の条件は変えません。)

[例]他の条件を同じにしたまま、「築年数」を10年から20年に変化させてみる。そして表示される物件の中から競合となる可能性のあるグレードの物件の賃料を見ます。現時点でのマーケットに出ている物件数が少ないと参考にならないことがあることに注意が必要です。

「マーケットの変化」は保守的に
築年数」以外に賃料水準の趨勢に影響を与えるのは「景気(ここでは“マーケット”ということにします。)」です。2013年頃からのアベノミクスを背景とした不動産価格上昇の波に乗り、都心部では賃料水準も上昇しました。不動産価格ほどの上昇率ではないですが、2014年頃からは賃料の設定にも強気になる傾向が見られました。
ただ、シミュレーションとして「マーケット」の波を想定するのは非常に難しいことです。長期保有であれば、“フラット(変化なし)”と想定するのが無難だと思います。

つまり、マーケットを理由として、「現賃料が上昇する」等の見通しを立ててはいけないということです。現に顕在化しているマーケットの動きは別として、マーケットの予想を賃料に反映する場合は、保守的にするべきです。

周辺の開発状況
都心部ではさほど気にする必要はないかもしれませんが、学生街や企業城下町等では、その大学や企業の移転や業績等の情勢変化に大きく影響されます。また、URなどが大規模な賃貸住宅を計画している場合も影響は免れないでしょう。

専門家から入手

当該物件の「賃貸履歴」
小規模な物件の場合、無いことがほとんどですが、あれば当該物件の「賃貸履歴」を貰います。景気に応じた相場の波にどれくらい影響されるかが分かります。また、建物が古くなるに従って、賃料が下落しているかどうかの把握も大切なことです。

当該物件に近い条件に合致した築年数ごとの「賃貸相場」
“当該物件に類似した物件”の「築年数」を変化させた賃料水準を出してもらうと参考になると思います。

既存の収益物件の収益性をシミュレーションする場合、「賃料の下落率」をどれくらいに見るか、というのは大きな問題です。逆にいうと、通常は賃料が下がっていくのが普通なのですから、その「下落」を想定しない提案書を持ってくるサブリース会社や管理会社、仲介会社等には注意が必要です。