国立研究開発法人 産業技術総合研究所が公表した「都市域の地質地盤図」が、立地の安全性を判定する際に、新たな視点を提供してくれています。
当サイトでも、大地震の際、家族の“命”と“財産”を守るためには、まずは安全な『立地』を選ぶことが大前提だということは繰り返してきました。
1.高台立地が原則だが、、、
そして、立地の選定で何か一つ優先する点を挙げるなら、それは「高台」を選ぶことです。災害の中には「水害」もあるので、「高台」を選ぶだけで災害リスクは確実に減らせるからです。
ただ、「高台」ならどこでも大丈夫かというと、そうでもないとうことが分かってきました。
(1) J-SHIS Map と 都市域の地質地盤図
「高台」でも、例外的に住んではダメな場所があり、それがどこなのかを教えてくれるのが、「J-SHIS Map」と「都市域の地質地盤図」です。
「J-SHIS Map」については、別記事「高台立地が原則だが、高台でもダメな場所がある」で説明しています。要は、J-SHIS Mapの「表層地盤増幅率」が“1.8”を超える場所は、「高台」であっても選ばないようにしましょう、とうことです。
(2) 都市域の地質地盤図
国立研究開発法人 産業技術総合研究所が2021年5月に発表したのが、『都市域の地質地盤図』です。
「都市域の地質地盤図」はボーリングデータ等をもとに東京都区部の地層の分布を3次元解析することによって作成した地質図です。今まで、ボーリング調査で把握した柱状図がポツポツと点在していて、連続的には地層がどうなっているのかあまりよく分かっていなかったところを、最新の技術でもって、全体像を明らかにしたのです。
これによって、“見える化”したのが都区部の地下に潜んでいた「埋没谷[東京層下部基底面](以下「埋没谷」と表記)」です。
2.埋没谷(東京層下部基底面)
この「埋没谷」は、12万年前~16万年前に、当時の多摩川によって作られた谷なのではないかとされ、その後の長い年月で、地層が重なり、台地状にまで地層が積みあがった場所もあります。
そして標高的には「台地」なのですが、谷だったころの名残りというべきか、「埋没谷」の範囲に該当する場所の地中には、柔らかい泥層が存在しています。
この“柔らかい泥層”が地中に存在する場所では、地震の際に揺れが大きくなる可能性があることが問題なのです。一見「台地」なのに、地震の際には低地のように揺れが大きくなる場所ということです。
上記は、「都市域の地質地盤図」を公開した際の産業技術総合研究所の記事です。記事の下段で「埋没谷」にも触れられています。
3.埋没谷エリアを見る方法
(1) 上記の「都市域の地質地盤図」を開きます。
(2) 左上のプルダウンメニュー[平面図の選択:]で「東京層下部基底面」を選択します。
(3) 地図上に表示される着色された範囲が、「埋没谷」に該当するエリアです。
4.最後は「ボーリング調査」のデータを見る
ここまで、「埋没谷」の範囲に該当するエリアは、柔らかい地層が存在し、地震の際に揺れが大きくなる可能性がある、ということを述べてきました。
ただ、「埋没谷」の範囲に該当しながら、J-SHIS Map の表層地盤増幅率が比較的小さい数値を示す場所もあります。
「都市域の地質地盤図」も「J-SHIS Map」も、新しいモデリング技術によって作成されたものです。最後に信用するべきは、やはり“生データ”です。対象地での「地盤調査報告書」を入手するのが一番です。
とはいえ、物件を探している際には「地盤調査報告書」を入手できることはほとんどないので、対象地の近隣にある公開されたボーリング調査地点の柱状図などを参考にするしかないでしょう。
「J-SHIS Map」+「都市域の地質地盤図」+「対象地近隣の公開されたボーリング調査結果」の3つの情報を合わせて、対象地の地盤の参考とするのが現実的かと思います。
[地盤が悪い場所] =(イコール) [大地震の際に揺れが大きくなる場所]です。できるだけ情報を集めて、地盤の悪いと思われる場所を避けるようにしましょう。家族の“命”と“財産”を守るために。