[自分で物件調査03] 周辺環境のリスクを見付ける

5.物件リスクを自分で調べる方法(周辺環境編)

前回までの立地編で、谷地や低地などの立地は災害時のリスクが大きいという話をしてきましたが、高台の平坦地であっても、周辺に潜むリスクを見落とすと資産性の観点から思わぬ落とし穴にハマりかねないという話をします。

(1) 安全性(犯罪発生件数)

住む場所は、とにもかくにも安全安心でなければなりません。“命あっての物種”です。犯罪発生件数の多いエリアには住みたくありませんよね。そこで、物件を購入する前に必ず見ておきたいのが、以下のサイトです。

犯罪情報マップ
https://map.digipolice.jp/


このページにはメニューが3つほどあるのですが、物件購入を検討している場合に最初に見ていただきたいのは、一番右のタブ「犯罪情報」です。

選んだ後に出てきた地図の左メニューのうち、以下のことを行ってください。
■データ種別 →「統計情報」になっていることを確認
■事案種別 →「全刑法犯」になっていることを確認
■データ期間 →「前年累計(現在が2022年なら2021年累計)」をチェック

これにより、長い期間でのその調査対象地域の安全性が把握できます。
一度この方法で確認した後は、お好きな期間や事案種別を選んで、色がどのように変化するか試してください。


上の図は、犯罪情報マップで「統計情報」「全刑法犯」「2021年累計」を選んだ後の曙橋駅周辺のキャプチャです。西の方に行き新宿駅が近くなるとさすがに治安が悪そうですが、東の方は黄色(5段階で一番件数の少ない)のエリアが広がっていることが分かると思います。

この件数情報は、町域ベースで集計されるので、狭い町域だと犯罪発生件数がゼロ(色なし)で表示されることもあります。また、広い町域だと件数では不利になる場合があります。このことを踏まえて、調べたい町域だけでなく、その周辺も見るようにしましょう。

私も、物件調査の際には、必ずこのサイトを見ます。治安の悪いエリアをお勧めしたくないので。

しつこくて恐縮ですが、繰り返します。“家”は『家族の命と財産を守ること』が一番の役目です。

(2) 周辺で確認しておきたいこと

高台の平坦地で、犯罪発生数も少ないことが分かった後に調べることは、物件の周囲にはどのような環境が拡がっているのか、ということです。

リスクの種類とその項目


1.隣地が駐車場

南側隣地が駐車場の場合、駐車場であるうちは日当たりがいいと思いますが、近い将来に建物が建つ可能性を考慮しましょう。広い駐車場の場合、高い建物が建つ可能性もあります。

駐車する車の向きによって、ヘッドライトの光が夜間窓を照らす可能性や、排気ガスがこちらの敷地に入ってくる可能性もあります。また、改造車やバイクがあると、エンジン音や排気音がうるさいこともあるでしょう。

2.隣地が空き家

古い空き家の場合、近い将来、建て替えることが予想されます。広い敷地の場合、高いマンション等が建つ可能性もあります。

空き家にゴミが放置され悪臭が漂っていたり、浮浪者が住み着いたり、若者が勝手に入り込んで遊んでいたりという最悪の状況も考慮し、確認とヒアリングが必要です。空き家でなくても、隣家がゴミ屋敷ということもありえますし。

3.嫌悪施設等の確認

事前に調べた嫌悪施設等を改めて現地確認します。地図には載っていたけれども、なくなっていたということもあります。また、地図では探せない施設も多い(高圧線等)ので、現地で周辺を見渡したり、ヒアリングすることで確認します。

そして、存在を確認したら、その影響も感じ取りましょう。音や臭い、煙が立ち上る様子など、現地で実感してください。当該嫌悪施設があることにより、対象不動産の価格が相場より少し安くなっているとしても、その価格の幅で納得できるかどうかは自分で感じるしかありません。

「嫌悪施設」の感じ方は、人それぞれです。なので、気にならない嫌悪施設のせいで価格が低く抑えられているのだったら“買い”という判断もアリだと思います。ただ、売却の際には、嫌悪施設はマイナス要因とみなされ、安くなりがちなので、「資産性」を第一に考える方にはお勧めできません。

4.低地や川の近くの場合

物件が昔の沼地、谷筋、窪地だった場所にある場合や、近くに川が流れているというような場所では、近くの古いコンクリート塀や電信柱に浸水の跡がないか確認してください。浸水の疑いがある場合は、近所の人にヒアリングします。また、都や区が集中豪雨対策で地中に貯水トンネルを埋め込む事業を行っていますので、それにより水害リスクが軽減された地域もあります。

ただ、地球温暖化の影響か毎年のように「史上最多雨量を更新」とか「局地的な大雨」というニュースが飛び交う昨今、過去の浸水被害だけで判断するのは無理があるかもしれません。やはり長く住むなら、高台にした方が無難でしょう。

5.周囲の街並み

街の将来を見極めるためには、対象不動産の周囲の街並みをよく観察する必要があります。道路沿いに点々と商店があるが買い物客はほとんど見掛けないような街並みの地域では、実質的には「住宅地域」なのですが、用途地域がその道路沿いに近隣商業地域と指定されている場合があります。近隣商業地域は指定容積率が通常住居地域より高いことが多いので、道路沿いに高いマンションが建ち並ぶ可能性があります。そのことを考慮せずに、道から一本入った土地を購入すると、眺望や日当たりが悪くなった等の不利益を将来的にこうむる可能性があります。

近隣に広い工場があり、あまり儲かってなさそうだなどと観察していたら、潰れた工場跡地に高いマンションが建ったということもあります。周囲の街並みを観察して、将来の動向を推測することは大切なことです。

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以上、今回は「周辺環境」について書いてみました。正直、ここまで調べている業者は少ないと思います。業者のセールストークに惑わされずに、自分で調べて自分で判断するために、このページが役立てば本望です。