都区内を流れる川で最も氾濫危険性の高いのは?

東京都区部を流れる川で、最も氾濫危険性が高いのは、何川だと思いますか?

1.氾濫したら、最も被害が大きいのは?

氾濫したら、最も被害が大きくなるのは「荒川」「江戸川」でしょう。
荒川や江戸川が氾濫すると、東京東部の海抜ゼロメートル地帯では、浸水深が10mに達する場所もあると想定されています。
10mの洪水が襲ってきたら、3階の室内に濁流が入ってきます。
木造の家なら、跡形もなく流されてしまう可能性があります。
マンションでも、3階までが濁流に吞まれたら、被害は甚大でしょう。

2.過去、最も氾濫した回数が多いのは?

過去35年(1990年以降)で、1,000棟を超える浸水被害を記録した川のランキングは、

《1位》3回 目黒川・立会川

[目黒川]
▼1991年9月19日
▼1993年8月27日
▼1999年8月29日

[立会川]
▼1993年8月27日
▼1999年8月29日
▼2025年9月11日

《2位》2回 神田川・呑川

その他、多摩川、隅田川等が1回です。

※「東京都豪雨対策基本方針」中の14ページ目「主要洪水一覧」から集計したものに、2025年9月11日の分を加えました。
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/toshiseibi/pdf_kiban_gouu_houshin_pdf_kaitei_s02

[参考] 東京都が公開している水害リスク情報システム「浸水実績図」には、過去浸水被害が発生した場所がマッピングされています。

3.「氾濫危険情報」が最も多く発表されているのは?

最近は、東京都が溢水しそうになる水を逃がすための地下神殿を作るなどして、氾濫の頻度自体は少なくなっています。

しかし、昨年、今年と2年続けて、1時間あたり100㎜を超える「記録的短時間大雨情報」が都区内でも発表されました。
雨の降り方が、昔と比較できない激しいものになっていることは、誰もが実感していると思います。

そんな激しい雨によって川が増水し、氾濫の危険性がある水位になると発表されるのが「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」ですが、この警戒情報が最も多く発表されている川はどこでしょうか。

指定河川洪水予報データベース(リアルタイム更新) | 気象庁防災情報XML

[指定河川洪水予報データベース]の「河川別の発表回数」から、同じ日や連続する警報はまとめて1回と数えた上で、2012年12月以降「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」が発表された回数をカウントしました。

《1位》目黒川 11回
1.2013年4月6日「氾濫警戒情報」
2.2013年7月23日「氾濫警戒情報」
3.2013年9月15日「氾濫警戒情報」
4.2018年8月27日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
5.2022年9月18日「氾濫警戒情報(警戒レベル4相当)」
6.2022年9月24日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
7.2023年6月3日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
8.2024年7月21日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
9.2024年8月30日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
10.2025月7月10日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
11.2025年9月11日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」

※以前 「氾濫警戒情報」 という名称が使われていましたが、2019年から気象庁・国土交通省が用語を見直し、現在は 「氾濫危険情報」 に統一されています。つまり、2019年以前の「氾濫警戒情報」= 現在の「氾濫危険情報」です。<以下、同じ>
※2022年9月18日の「氾濫警戒情報」については、(警戒レベル4相当)となっていたので、同等の警戒情報と判断しました。

《2位》野川 5回
1.2015年8月16日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
2.2024年7月31日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
3.2024年8月7日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
4.2024年8月30日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
5.2025年9月11日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」

《3位》妙正寺川 3回
1.2021年6月16日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
2.2024年7月20日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
3.2025年9月11日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」

《3位》渋谷川・古川 3回
1.2016年8月20日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
2.2024年7月6日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
3.2024年8月21日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」

その他、主な河川を挙げると、「石神井川」は、2回。
1.2023年6月3日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
2.2025年9月11日「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
荒川」1回
1.2019年10月12~13日 「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」
多摩川」1回
1.2019年10月12日 「氾濫発生情報(警戒レベル5相当)」・「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」

神田川」1回
1.2013年4月6日 「氾濫警戒情報」
※神田川が1回というのは少ない気がしますが、2025年7月10日に「氾濫危険水位」を超えた際も、「氾濫危険情報」は発表されなかったのですね。(参照:令和7年7月10日の大雨に関する東京都気象速報)

以上の通り、目黒川がダントツで氾濫危険性の高い川となっています。

神田川は、「戦後、1000棟以上の浸⽔被害を出した氾濫を19回も起こしている」という情報も目にしましたが、裏付けが取れませんでした。新宿区に住む者としては、神田川が氾濫危険水位に達したという情報は、数年に1度くらいの頻度で聞いている気がするので、「氾濫危険情報」の発表が少ないのは意外でしたが、安全な川とは思えません。

4.都区内で氾濫危険性が最も高いのは「目黒川」

「過去35年(1990年以降)で、1,000棟を超える浸水被害を記録した川」でも、1位の3回。
「2012年12月以降「氾濫危険情報(警戒レベル4相当)」が発表された回数」でも、1位の11回。
ということで、都区内で氾濫危険性が最も高いのは「目黒川」といえます。

これは、あくまで過去のデータに基づく記録です。

最近の雨の降り方は、非常に激しく、かつ局所的になっています。
「目黒川」だけが危険で、他の川が安全な訳ではありません。

1時間あたり100㎜を超える「記録的短時間大雨情報」が発表されるような雨が降ったら、どの川でも氾濫の危険性があります。
こんな雨が降ったら、川の近くでなくても、内水氾濫が発生する危険もあります。
下水道の処理能力は概ね1時間あたり50㎜までの雨を想定しているので、谷地や低地では、どこでも浸水被害があり得ると考えるべきです。

5.豪雨時代の解決策は、「高台」に住むこと

川が氾濫するとき、氾濫する直前まで、道路に溜まる水の量は「大したことない」レベルであることが多いです。
当たり前ですが、川が溢水するまでは、その川に集中して排水されているので。

で、川の許容量を超え、水の高さが堤防や河岸の高さを超えると、一気に水が流れてきます。
なので、避難は、「事前に」する必要がある訳です。

家の前に溢水した川の水が流れ始めた、
じゃあ避難しよう!では遅いんです。
溢水した、ということは、急に水かさが増し、流れも速くなる可能性が高いのです。

「やべぇ、近くの川が氾濫したみたいだから、急いで逃げなくちゃ」というのが一番悪い行動パターンです。

なので、最近は、事前に避難をしなかったのなら、仕方がないので、その場所で一番安全な方法を取るように言っています。
氾濫した後に、外を歩くのは、命を捨てるようなものです。

水害の際の避難は、「事前に」が基本です。

ですが、「記録的短時間大雨情報」が発表されるような雨が降ったら、その雨の中を避難するのも危険ですよね。

雨の降り方が、今までとは違うレベルになっているのを実感しているのなら、「高台」に住みましょう。