洪水ハザードマップを今一度見直しましょう!

[草の根不動産鑑定士のブログ]と内容は同じです。内容的にこちらにも掲載した方がいいと思い、重複掲載します。

台風19号の被害に遭われた方々には心からお見舞い申し上げます。改めて水の怖さを思い知らされました。

今回もニュースを見ていますと、浸水したエリアと自治体が作成する「洪水ハザードマップ」の浸水可能性エリアが結構な確率で一致していることが指摘されていました。

ここでは、改めて「洪水ハザードマップ」の見方をお知らせしたいと思います。
市区町村では、「洪水ハザードマップ」を作成しています。
#作成していない自治体もあるらしいですが、東京近郊ならまずあります。

しかも、私の事務所がある新宿区は、毎年のように更新しています。曙橋付近では、以前の洪水ハザードマップでは、最大5mの浸水可能性を指摘されていたのですが、最新版(2021年8月)だと最大1mほどと訂正されました。

曙橋付近で心配される溢水は、下水道が溢れてくる「内水氾濫」なので、まぁ妥当かなと思います。新宿区では、浸水可能性を「土地の標高(高低)」及び「下水道処理能力」から判断しているそうです。
※曙橋付近の内水氾濫については、以前書いた記事をご覧ください。

私が洪水ハザードマップを見る際の手順は以下の通りです。

1.浸水可能性の有無

まずその場所に色がついていないかどうか見ます。上の洪水ハザードマップをキャプチャした画像で、曙橋駅付近の靖国通りは、オレンジ色(0.5m~1.0m)と黄色(0.1m~0.5m)が混在しているのが分かります。

調査対象物件の場所に色がついていたら、浸水可能性がある立地ということです。

2.浸水深と浸水継続時間

凡例から浸水深の色と浸水継続時間を読み取ります。洪水ハザードマップの色がついている場所は、その色により浸水深が異なります。要は、リスクが異なります。

凡例とよく照らし合わせて、その場所は何mまで浸水する可能性があるのかを読み取ってください。新たに家を購入しようとする人には、そもそも浸水可能性がある場所はお勧めしません。上層階に住むから大丈夫だ、という人がいますが、1階が浸水したらそのマンションの資産性はガクンと下がりますからね。

そして、浸水継続時間も大切な情報です。ニュースでは、「3日経っても水が引きません。」という映像をご覧になったことがあると思いますが、水が引かないことには、被害の状況も把握できません。

#新宿区では、浸水継続時間は最大で24時間とされています。水が長く滞留するエリアはないと想定しています。

3.周囲の土地との高低差

そして、周囲の土地との高低差を調べます。浸水可能性を指摘されていても、坂の途中だとか、隣接する土地が一段下がっていれば、調査対象物件の場所の浸水リスクは多少軽減されると考えてもいいでしょう。

逆に、周囲の土地がみんな高くて、谷地や窪地のような場所であれば、浸水の深さが想定を超えることや、水の滞留時間が長期化する可能性も考えなければいけません。

この際に使用するのが、国土地理院の「国土地理院の標高がわかるWeb地図」です。

例えば、上のキャプチャ画像の曙橋駅と書いてある地下鉄出口付近を見ると標高は約20mであることが分かります。そして、上下(南北)の地点を調べると、黄色とオレンジの場所でさほど高低差はないように見えます。

この地図に高い精度は求めていません。あくまで参考資料です。その上で、地図に誤差はあるとしても、あまり高低差がないように見えるということは、黄色の部分も1.0mの浸水可能性があるかもしれない、と思っておいた方がいいということです。リスクは大きい方を採用するように心掛けましょう。

また、靖国通りをどんどん東に辿っていくと、徐々に標高が下がります。つまり、曙橋で水が溢れても、ここで滞留する可能性は低く、市谷の方に流れていく可能性が高いことが分かります。

この地図を活用して、調査対象地だけでなく、周囲の土地の高低も調べましょう。

洪水ハザードマップの見方は以上です。
以前書いた水害に強い立地をお勧めする記事は以下の通りです。参考まで。

安心安全に暮らしたいなら、大水害でも大丈夫な立地を選ぶ


資産性を決定づけるのは“立地条件”です
https://property-analysis.org/location_is_most_important/

台風19号により武蔵小杉のタワマンが被害を受けた件で、住民が「こんなこと聞いていない」と憤っているインタビューが流れていましたが、生涯かけて借金を返すような住宅ローンを組み、数千万円の買い物をするのですから、何故、買う前に調べなかったんだろうと思ってしまいます。

浸水リスクを説明しない業者も本当にダメだと思いますが(個人的には提訴されても仕方がないのではと思います)、とことん調べようとしない購入者にも首をかしげたくなります。調査の過程で分からない点があれば、専門家を使ってでも疑問点をできるだけなくしてからハンコを押すべきでしょう。

家は「家族の命と財産を守る」ためのものなのですから、リスクはできる限り明らかにするべきです。